第19章 僕が一番欲しかったもの

僕が一番欲しかったもの<13>

それからボクは初対面の人に対して「バックはしない」と、はっきり宣言するようになった。相手から「ノリが悪い」と言われたことも何度もあったけど、別に言われても気にしなかった。 自分の身を守るのは自分の意志だけだと思っていた。 呆れて相手が去って…

僕が一番欲しかったもの<12>

結論から言うと、ボクは性病にかかっていなかった。 もちろんHIVにも感染していなかった。 そりゃそうだろう。過去に書いた文章の中にも、ボクは病気にかかったことがないと書いている。それにHIVに感染していたら、もっと別の文章を書いているだろう。2000…

僕が一番欲しかったもの<11>

その後、出会い系の掲示板をよくよく観察していると、彼は毎日のように投稿を続け、誰かと会うことを繰り返していることに気がついた。そして京都市内では「要注意の人物」として扱われていることを知った。 こいつ毎日書いているよね。 この人仕事してるの…

僕が一番欲しかったもの<10>

それまでも何度か彼にメールを送って、直接本人に問いただしてみようと思ったことはあったけど、 「あなたは性病にかかってるんじゃないですか?」 とは、なかなか訊きづらい質問だ。もし間違ってたら失礼になるとか思ったりして躊躇していた。 ただ微熱が続…

僕が一番欲しかったもの<9>

どんなに「ボクは大丈夫」だと思い込み、性病のことを忘れ去ろうとしても簡単に忘れることなんてできなかった。 そして徐々に体に変化が出てきた。 まずは食欲が無くなった。何を食べても美味しいと思えなくなって食事量が減った。それに何をしても楽しいと…

僕が一番欲しかったもの<8>

しばらく待ってみても掲示板上に続きの書き込みはなかった。 自分から「さっき書き込まれていた方の病気って何なんですか?」と投稿してみたかったけど、勇気が出なかった。 本当のことを知りたいと思う反面、本当のことを知りたくないという思いも持ってい…

僕が一番欲しかったもの<7>

タイトル:京都市内で今から犯して欲しいです。京都市内の○○○○に場所があります。 165.55.34 投稿者:ゆう この人って……つい先日に会った人じゃないだろうか? ボクはある書き込みを前にして、リストと見比べていた。投稿者の名前は違っていた。でも以前に書…

僕が一番欲しかったもの<6>

その後も、ボクは飽きもせずに『ゲイ向けの出会い系の掲示板サイト』を眺めていた。ただ、ボクも成長したのか、何人かのとんでもない人と出会って、徐々に用心深くなっていった。 そして、ある時期から 「絶対に会ったらいけない人リスト」 というものを作成…

僕が一番欲しかったもの<5>

ゲイの世界は肉体関係が優先されることが多い。そのことを嫌っていたのに、結局はボクも同じことをしていた。 こんな自分のことを知ったら幻滅するだろうな? そう思いつつ、両親や友達のことが頭の中をよぎって「罪悪感」を感じていた。さらに見知らぬ人と…

僕が一番欲しかったもの<4>

ボクはシャワーを借りて部屋に戻った。彼は寝室から居間に移動していて、こたつに横になっていた。そして仰向けになったまま、おでこを手で抑えて苦しそうにしていた。 「大丈夫ですか?」 ボクは恐る恐る声をかけた。「テレビをつけてもらえる」と言われた…

僕が一番欲しかったもの<3>

ラッシュを吸った人と肉体関係を持ったのは、この人が最初で最後だった。 だから他の人がラッシュを吸って、どうなるのか分からない。ボクの勝手な想像では、ラッシュを吸うと頭や体がとろ~んとして、ぼんやりなるのかと思っていた。 ただ、ボクの前でラッ…

僕が一番欲しかったもの<2>

その人からは「ウケ」だと聞かされていた。ボクも自分のことを「ウケ」だと思っていた(まだ自分が「リバ」だと気がついていなかった)。 「ウケ」同士で肉体関係を持ったことがある人なら分かると思うけど、全く盛り上がらない。 しかも、その人はボクよりも…

僕が一番欲しかったもの<1>

名前も知らない男性に手を引かれて暗い部屋に案内された。 その部屋に入ると、男性はボクに抱きついてきた。そして自分の服を脱ぎながら、ボクの服も脱がし始めた。 どうしたらいいのか分からず、緊張したまま彼のされるがままに任せていた。 服を脱がされな…