第29章 いつも見ている風景

いつも見ている風景<6>

ボクは少し離れてから振り返ってあの店が入っている建物を見つめる。そこにはついさっきまで裸で寝ていたあの建物がある。ボクと同じ仲間が夜になると隠れるようにあの建物を集まって、明け方になると隠れるように店から出て街に消えて行く。みんな昼間は普…

いつも見ている風景<5>

いつまでこんなことを繰り返してるんだろう…… ボクは抱き合って寝ている相手の頭を撫でながらそう思った。彼は寝ながらも時々強く抱きしめてくることがあってボクもその度に強く抱きしめ返していた。 明日も仕事だし終電前には帰ろうかな…… 急に現実的な考え…

いつも見ている風景<4>

相手は寝転がって目をつぶっているけど起きているのは分かっていた。ボクはカーテンをそっと閉じて再び寝転がった。 ボクの好みのタイプだ。 年齢は同じ年くらいに見えた。ボクと目が合って、それから戻って来て隣の部屋で寝てるってことは、彼の方も少しは…

いつも見ている風景<3>

ボクはそっと目を開けて左の隣室を見た。隣室といってもレースのカーテンで仕切られているだけだ。暗い中でもうっすらと相手の姿を見ることができる。隣の人はボクと同じように毛布を体までかけて寝ていた。相手もボクと同じように微かに目を開けて隣室の様…

いつも見ている風景<2>

しばらくすると、再びロッカーの扉を開ける音がした。ロッカーの中の荷物をさわる音がガタゴトして扉を閉める音がした。そして廊下を歩く足音が聞こえる。ボクの見上げている薄暗い天井に微かに一人の人影が揺れている。扉を開ける音や、カーテンをめくる音…

いつも見ている風景<1>

ボクは寝転がったまま天井を見ていた。天井には微かに廊下から漏れてくる明かりが映っていたけど、ほとんど真っ暗だった。時刻は二十一時。別に眠たくて寝っ転がているのではない。ボクの頭の上の方には壁があって、足元と左右の方にはレースのカーテンで仕…