第41章 絶対に会えてよかった

絶対に会えてよかった<103>

もしかしたらネットに投稿した文章を読んで、誰かがメッセージをくれる人がいるかもしれない。 もしかしたらハッテン場に立っていれば、誰かが声をかけてくれる人がいるかもしれない。 僕が今まで出会ってきた人たちも声には出さないけど、そんな思いを胸に…

絶対に会えてよかった<102>

僕は過去に出会ったゲイの人たちのことを文章に書き始めていた。 今まで出会った来た人たちのことを忘れないように自分の記憶に刻み込みたいと思った。それにゲイの世界にある別の側面についてもっと広く知って欲しいと思った。 そして、いつか僕の書く文章…

絶対に会えてよかった<101>

彼は「なんで起こしてくれなかったの?」と文句を言って来たので、「何度も起こしたけど、起きてもすぐに寝ちゃたんですよ」と説明をした。それから他の部屋から「うるさい」とクレームが来ていたことや、「うるさくて眠れない」と言っていた人がいたことを…

絶対に会えてよかった<100>

同年代の男性からの抗議を受けて「そんなにいびきが五月蠅ければ、もっと離れた個室で寝ればいいのに」と思ったのだけれど、よくよく彼の説明を聞くと困っている理由も納得できた。 その日は客が多かった。 ボクの実感では、冬の寒い日になると有料ハッテン…

絶対に会えてよかった<99>

彼は「地元の祭りがあって酒を飲んだ勢いで、そのまま店に来た」と酒臭い息を吐きながら説明してくれた。彼の体はフラフラとおぼつかなく揺れていて、呂律も規則正しく回っていなかった。いつになく強気にボクの体に触れようとするも、そのままもたれかかっ…

絶対に会えてよかった<98>

ボクが人間関係を築く際に、個人的に重視していることが2つある。 それは「琴線に触れるような言葉を言ってくれるか」どうかだ。 これは話し言葉でも、書き言葉でもどちらでもいい。言葉でなくても生き方や身振りやなどの姿勢や態度でもいい。どんなに見た…

絶対に会えてよかった<97>

あの階段ですれ違った日から、ボクは数週間後に同じ店に行った。それから店内で彼の姿を探していた。 年上の猫背。 彼と初めて会って以降、ボクはそれらを手がかりにして彼の姿を探すようになっていた。 彼は全く物音を立てずにいきなり姿を現す。でも暗い闇…

絶対に会えてよかった<96>

ボクはカーテンをめくって別の部屋に行こうとしていた。 各部屋はカーテンと短い通路で仕切られていた。別の部屋に移る間にはカーテンを開けて、薄暗く短い通路を歩き、また次の部屋の入口になっているカーテンを開けて移動する必要があった。 ボクがカーテ…

絶対に会えてよかった<95>

彼は上の階からボクと同じ場所までゆっくりと降りてきて「また今度会おうね」と言って抱きしめてくれた。ボクの方も「また金曜日の夜に来ますね」と言って抱きついた。ボクらはいきなり下の階から人が来たり、入り口のドアが開いて人が出てこないか、人の気…

絶対に会えてよかった<94>

ボクの言葉を聞いて彼は頭の中で記憶の糸を辿っているような顔して頑張って思い出そうとしていた。 ボクは「●●で働いてる者です」と付け加えた。するとようやく思い出したようで「あぁ……思い出した。君だったのか」と言った。ボクはちゃんと思い出してくれた…

絶対に会えてよかった<93>

店を出て下の階で足音が聞こえた瞬間、ボクは少しだけ立ち止まった。下の階の方でも誰かが立ち止まったのか、少しの間、足音が聞こえなくなった。 やっぱり誰かいるのだろうな。 そんな感じでお互いに立ち止まって耳を澄ませて階上と階下の様子を探っていた…

絶対に会えてよかった<92>

もう「あの人」は来ないのかな? ボクは薄暗い廊下の壁にもたれて大半の時間を潰していて、「ずっと立ったままだったから足が疲れたな」としびれた足に限界を感じていた。店に入ってから既に2時間近く経っていた。 廊下を歩いている人を観察して時間を潰して…

絶対に会えてよかった<91>

彼とは2016年の12月まで有料ハッテン場で会っていた。 このブログを書き始めたのが2017年の2月だから、文章を書き始める2か月前まで会っていた。もっと正確に言えば2017年の1月からnoteで文章を書き始めていたので、ほんの1か月前まで会っていたことになる。…

絶対に会えてよかった<90>

こんなにキスマークだらけになって大丈夫なのかな? 自分で大量につけておいてなんだけど、薄暗い店内でもはっきりと分かるくらいに、キスマークの赤いあざがついてしまっていた。もはや衣服を着ても隠せるレベルじゃないくらいに首についていて、大人なら一…

絶対に会えてよかった<89>

彼の耳の下の辺りや首の後ろの辺りを、優しく撫でてキスしてあげると、身体をよじらせて感じていた。 ボクは彼が感じている様子を見て思わず笑いそうになった。 夏場になるとよく犬が長い舌を出して「はっはっはっはっ」と声を漏らしながら、よだれを垂らし…

絶対に会えてよかった<88>

なんとなく彼を放置したまま去りがたくて個室の入口の辺に立っていると、彼は顔を上げてボクの方を見た。そして「一緒に寝て欲しい」という感じに腕を伸ばしてきた。 そんな弱っている彼の姿を見て下心が湧かないといえば嘘になる。 ボクがその気になれば、…

絶対に会えてよかった<87>

彼の体は上半身も下半身も大量にローションがかけられてベトベトになっていた。それというのも彼がなかなかイってくれないからで、ローションをかけては乾く。またローションをかけては乾くと何度も繰り返してた。 一人目は彼を背後から抱くようにしてキスを…

絶対に会えてよかった<86>

ボクは個室の入り口で「どうしたものか?」と躊躇していると、彼は自分の身体を責めている40代の男性の顔を見た。 「この入り口に立っている人も一緒に混ぜてくれませんか?」 そんな言葉を込めた表情を作って40代の男性に訴えかけた。ボクも先に彼に手を出…

絶対に会えてよかった<85>

恐る恐る手を伸ばして彼の身体を触れるとなんの抵抗もなく受け入れてくれた。むしろボクの方から触れなくても彼の方から積極的に抱きついてくれた。ほとんど年下から誘われることがないボクにとっては珍しいケースで驚いていた。 ボクと彼は布団に横になって…

絶対に会えてよかった<84>

◇ 「痛い! やめて下さい!」 ダンスミュージックがガンガンに鳴り響いている店内で、若い男性の声がいきなり響き渡った。 店内のいくつかの部屋からは「あぁん」や「いやぁん」や「ちゅぱちゅぱ」といった淫らな音が聞こえていたけど、若い男性の叫び声が聞…

絶対に会えてよかった<83>

ボクは大学時代に時々だけど、こういった感じで出会い系の掲示板経由で誰かと会っていた。でも、その大半は不毛な出会いだった。 次こそは本気で付き合える誰かと出会えるんじゃないか? そう期待しながら書き込みしていたけど、現実は落胆の連続だった。 そ…

絶対に会えてよかった<82>

この人とは以前どこかで会ったことがあるような気がする。 今となっては彼の顔も話した内容も忘れてしまったけど、メール経由で会った時はぼんやりと覚えていた。 彼の後を歩きながら、いつどこで会ったのか思い出そうとしていた。彼はあまり顔を見られたく…

絶対に会えてよかった<81>

今となっては「顔」も「会話の内容」も思い出せない人。でも確かに実際に会った人。 話の流れで、ついでにそういった二人ほど続けて紹介する。 一人目は、真冬の深夜遅く。京都の桂川にかかる渡月橋の上で出会った人だった。 ボクは待ち合わせ場所に先につい…

絶対に会えてよかった<80>

彼の乗った車が西大路通を右折して南に下っていくのを見送ってから、ボクは家に帰るために夜道を歩いた。そして彼と出会ってから別れるまでの一連の出来事を思い返していた。 そして恐ろしいことに気がついてしまった。 ついさっきまで会っていた彼の顔をは…

絶対に会えてよかった<79>

シャワーを浴びて戻ってくると「もう出ようか?」という話になって、彼は受付に電話した。 電話が終わってしばらくすると入口のドアがノックされた。ボクは彼からホテルの利用料を聞き出して「半分払います」と言って財布からお札を3枚ほど取り出した。彼は…

絶対に会えてよかった<78>

どんなに取り繕って書いても綺麗に書けない出会いがある。 ボクがゲイとして生きている中で一番に活動していた大学時代。やっぱりそういった人と何人も出会っていた。生まれて初めてラブホテルで肉体関係を持った相手も、そんな感じの相手だった。 例えば、…

絶対に会えてよかった<77>

彼は我慢ができないようで、シャワーを浴びて出てくると、すぐにボクに抱きついてきた。野外で抱きついてきた時もだったけど、興奮しているのか「ハァハァ」と吐息を漏らしていた。その息がやけにタバコ臭かった。そういえば彼は出会ってから車の中でも頻繁…

絶対に会えてよかった<76>

ラブホテルの駐車場には、思ったよりも沢山の車が停まっていた。 車を降りてドアを閉めると、彼から「そこのドアを開けて先に入っていいよ」と言われた。確かに、他の客から同性同士でホテルに入る姿を見られるのはまずいと思ったので、駐車スペースに書かれ…

絶対に会えてよかった<75>

高級スポーツカーは向きを変えて、山中を激走して高速道路に再び戻った。 「いやぁ~~~ラブホテルって前から一度は行ってみたかったんですよね!」 「本当に行ったことないの?」 「本当にないですよ。初めてです!」 ボクはわざと明るそうな振りをして話…

絶対に会えてよかった<74>

彼から送られてきたメールには「本気で付き合える真面目な人を探していて、実際に会って話をしてみたい」と書かれていたけど、これなら野外のハッテン場で会った人たちや銭湯にいた人たちと変わらないと思った。 彼はボクを抱きしめたまま、片手で後部座席の…