同性愛者であることの悩みに関して、何の進展もなく時間が過ぎ、大学1年生の冬を迎えつつあった。キャンパス内では次々とカップルが誕生していてベンチで楽しそうに話していた。
「羨ましいな・・・ボクにはいつになったら普通に彼女ができてベンチで楽しそうに話す日が来るんだろう」
大学の講義が終わり、ボクはカップルを横目に独り身の寒さに震えつつ部室に行こうとしていた。誰か友達と話すことで寂しさを紛らわせようとしていた。そんな部室に向かう途中で声をかけられた。
「神原くん!」
振り返ると笑顔で手を振っている女性がいた。彼女の名前はカタハラさん。彼女に気づいたボクも笑顔になって声をかけた。
「そっちも講義は終わり?今から部室に顔を出すの?」
彼女とは同じサークルだった。
「今からバイトだよ。20時には上がるからバイトが終わってから一緒にご飯食べない?」
「いいね!じゃバイト終わったらメールしてね。バイト先まで行くから」
「うん!じゃまた後でね」
彼女と別れたボクは部室に向かって彼女のバイトが終わるまで時間を潰すことにした。実はボクが大学生になってから一番の親友が、男性ではなく女性のカタハラさんだった。大学生になり一緒に過ごした時間が一番長いのも彼女だった。
「ねぇねぇ!神原ってカタハラと付き合ってるの?キャンパス内でいつも一緒にいるし」
サークルの仲間内ではいつのまにか、ボクとカタハラさんが付き合っていることになっていた。
「はぁ?そんなつもりはないよ。彼女とはあくまで友達感覚でしかないよ」
そしてカタハラさんも同じことを言われたようだった。
「同じゼミの人から神原くんと付き合ってるのって聞かれたよ〜何でかって聞いたらいつも一緒にいるからって言われたよ」
彼女は笑いながらボクに話してきた。実際、ボクは彼女に恋愛感情は抱いたことはなかったし、彼女もボクに恋愛感情を抱いたことはなかったはずだ。彼女はただ「男友達」が欲しかったのだ。
ボクらが知り合い仲良くなり始めた頃、彼女は悩みを打ち明けてくれた。
「中学時代や高校時代に女子生徒同士の付き合いに疲れててさ・・・仲間内でも悪口やいじめばかりで、いつ自分が仲間外れにされるかばかり気にしてたんだ。仲間外れにならないように必死だった。だから学校にも行きたくなかった。もう女友達はいいから、大学生になったら男友達が欲しかったんだよね」
彼女の性格はサバサバしていて、とても男らしかった。そしてボクはゲイだからかわからないけど、何故か女性と友達感覚で付き合うことに慣れていた。そんなボクと彼女は話していてたまたま馬が合ったのだろう。ボクらは急速に仲良くなっていった。
<つづく>