はじめての有料ハッテン場<2>

 横断歩道の人ごみをかき分けてボクは向かいのビルを目指して走っていた。ビルに辿り着くと、エレベーターのドアは閉まりかけていた。ボクは慌てて開ボタンを押して、エレベータに飛び込んだ。エレベータの中には、三十代後半くらいの男性がいたが、飛び込んできたボクを見て驚いていた。

 ボクはエレベーターの行き先を確認した。「よかった。四階のランプが点灯してる」そう確認してから閉ボタンを押した。よくよく考えてみると、このビルには他のテナントも入っているはずで、この男性が四階で降りるなんて保証はどこにもなかったはずだ。当時のボクは緊張からか、そんなことを考える余裕もなかった。エレベータの中では気まずい雰囲気が流れていた。この男性はボクの方をチラチラ見ているのが分かった。ボクはドキドキとかなり緊張していたが、ズボンのポケットに手を入れて目を合わさず何食わぬ顔をしていた。四階で降りる時点で、ボクらは同じゲイ仲間だ。

 エレベーターは四階に着き、ボクは開くボタンを押して「お先にどうぞ」と言った。サポーターの店内がどうなっているのか分からなかったので、この男性の後をついて行くつもりだった。「ありがとう」と丁寧に頭を下げ、男性はエレベータを降りて、廊下を右に曲がった。ボクは急いで後を追った。

 廊下を右に回った瞬間、ボクは目の前には別世界が広がっていた。左手の壁には所狭しとゲイのアダルトDVDのポスターが貼られていた。右手にはアダルトショップがあった。アダルトショップは六畳ぐらいの広さで、ローションやコンドームや大人のおもちゃなどが色々置いていた。先に入った男性は受付の店員とやり取りをしていていた。ボクはアダルトショップの売り物を眺めながら、二人の会話を聞き漏らすまいと耳を傾けていた。先に入った男性はお金を支払いタオルと鍵を受け取って先に進み始めた。

「よし……次はボクの番だ」と決心してボクは受付に向かって歩き出した。

<つづく>