「このハッテン場で出会って、付き合ったりしてる人っているんですかね?」
ボクは気になっていたことを訊いてみた。
「多分いないと思うよ。そもそもハッテン場に来てる時点で、セックスが目的だから難しいと思う。付き合うとか健全なことが目的ではないからね。俺も何回か同じ人と寝たことはあるけど、それ以上の関係はなかったよ」
その話を聞いてがっかりした。やっぱりハッテン場ってそんな所だよな。頭では分かっていたけど、ボクは希望を捨てきれずにいた。
「そろそろ帰らないと……」
結局、ボクらは二時間近く個室で寝ていた。お互いに抜き合いなどして気持ちよくなった後も、抱き合ったまま沢山会話をしていた。別の個室からも男性同士の話し声や、セックス最中の声が聞こえていた。
二十三時くらいには帰らないと奥さんに怒られるって言ってたもんな。
「ありがとうございました」
ボクは体を離してお礼を言った。
「あのさ……ちょっと階段の所までいかない?」
少し照れ臭そうに彼は言った。
「いいですけど……階段のところですか?」
ボクらは一緒に個室から階段のある場所まで歩いた。階段の所まで行くと照明があってお互いの顔がはっきり確認できた。明るい場所で見た彼の顔は、ボクが思ったよりもよっぽどかっこよかった。彼はボクの顔を見て言った。
「よし! 君の顔を覚えたよ。時々しか来ないけど、また会ったら宜しくね。嫌なら断ってくれていいけど……」
「そちらがよければ、ボクもお願いします」
見境もなく知らない人と関係を持つのは嫌だったので、この人となら次も関係を持ってもいいかなと思っていた。最後に階段の前で抱き合ってボクらは別れた。
<つづく>