同性への憧れと恋愛の境界線<1>

 同性愛者の恋愛観について紹介したい。

 恋愛観といっても、あくまでボク独特の恋愛感になると思う。過去に何人かのノンケや同性愛者に、この話を打ち明けたことがあるんだけど、みんな一様に「変わってるね」と言われたので、やっぱり一般的ではないのかもしれない。

 この話は高校一年生にまで遡る。

 ボクは数学が苦手だった。いや正確にいうと数学のレベルに達する前に、算数のレベルから苦手だった。中学二年生になった頃から、数学で証明問題という厄介な敵が、教科書に出始めたぐらいから数学についていけなくなっていた。それでも中学生くらいまではなんとか授業にはついていけたのだが、高校生になってからは、完全にお手上げという状態になった。

 そもそも答えが一つなら、得意な人が問題を解けばいいじゃん。

 そんな屁理屈を言っては、数学を勉強することから逃げていていた(社会人になってから、真面目に勉強しておけばよかったと後悔することになるのだけど)。

 好きな授業は現代文と古文という文系科目で、理系科目の授業は全くと言っていいほど、苦手な上に興味が持てなかった。数学の授業は家から持って来た小説を、教科書で隠して読む時間に変わり果てていた。

 もともとボクの家系は全員が文系だった。

 文系の家族は、理系の科目を教えることもできずに色々悩んだ結果、塾に行かせることに決めた。ボクは自宅から自転車で十五分ほどで通える個人塾に通うことになった。何故、その塾に通うことになったかというと、ボクの兄も数学が苦手だったので、その個人塾に通っていたのだ。兄もその塾に行くことで、なんとか数学という荒波を乗り切ったので、ボクも同じように、その塾に丸投げされたのだ。

 その塾の先生は六十代の男性で、以前はどこかの高校の数学の先生をしていたらしい。先生が個別に授業を行っていくというよりは、生徒は塾に行って教科書や参考書や問題集を持ち込み勉強して、分からない所を先生に質問するという形式だった。

 そんなこんなで始まった塾通い。ボクの親は大きな誤算していた。

 ボクは兄以上に数学が超苦手だったのだ。塾で分からない所を先生に質問する前に、自分がどこを分からないのかすら分からない状態だった。暗中模索、五里霧中な状態だった。塾に丸投げしておけばよいという打算は脆くも崩れ去っていた。

 ボクは塾に来て、ぼおーと窓の外を見て時間を潰していた。ただ塾にいる三時間が無駄に過ぎていた。

 そんなある日、とある出来事を境に急に自発的に塾に通うようになった。

<つづく>