カミングアウトの代償<12>

 学校を休んでいるときに何をしているのかというと、割と毎日を楽しく過ごしていた。

 この話をするのは、かなり変わったボクの性格がバレてしまうので紹介するのも恥ずかしいけど勇気を出して書いてみる。

 よく登校拒否をしている子供のイメージだと、部屋に篭ってずっとテレビを見たり、テレビゲームをしているイメージがあるかもしれない。

 でも、ボクはテレビゲームをしない。正確に言うと小学生まではゲーム漬けの毎日だった。学校から帰るとすぐにテレビゲームをして遊んでいたいし、休みの日も一日中、テレビゲームで遊んでいた。けれど中学生になった頃から全くテレビゲームをしなくなった。ボクはスーパーファミコン以降のテレビゲーム機で遊んでいない。ゲームにハマったのは、大学時代にパソコンのネットゲームに数ヶ月間ほど熱中したのが最後だった。ストーリー性のあるロールプレイングゲームも嫌いではないのだが、クリアするまでに何十時間もかかるし、それなら小説を読んだり、映画を見たりして何本もの物語を楽しんだ方が効率的だと考えていた。

 それに高校生になってから、テレビ番組も見なくなっていた。中学生まではバラエティ番組を見て笑っていたけど、なぜだが急にバカバカしくなって見るのを止めてしまった。NHKのニュース番組やドキュメンタリー番組くらいしか見なくなっていた。テレビを見ない代わりに深夜ラジオをよく聞いていた。ラジオ番組にハガキを出して読まれては喜んでいた。ハガキ職人というやつだ。地元の地方局の番組やオールナイト日本やNHKのラジオドラマなどをよく聞いていた。高校三年生になる頃には、そういったラジオ番組にも飽きてしまい、ラジオ深夜便という番組にはまってしまう。聴取者層が六十歳以上と言われる高齢者向けの番組なのだが、かれこれ二十年近く聴いている。この番組を高校生から聴いている人はかなり少ないのではないかと思う。毎晩、布団に入ってから、微かに聞こえてくるアナウンサーの声を聴いていると、心が落ち着いてゆっくり眠れる。

 暗い部屋の布団の中に独りでいると、世界に自分以外の人間がいないような気分に襲われるけど、微かに聞こえるラジオの音声を聴いていると、何だかその孤独感が癒される気がしていた。

 この習慣は大人になった今でも続いている。

 ボクは本を読んだり、映画を見たり、ラジオを聞いたり、勉強をしたりして学校を休んだ日を悠々自適に過ごしていた。

 ただ、徐々に学校を欠席する日数が増えてくれば、流石に母親も何かに悩んでいることに気づいたようだった。ある日、いつものように学校を休みたいと母親に伝えると、すぐに学校に欠席の電話を入れてくれた。電話をかけた後に母親が言った。

「今日は母さんも仕事を休もうかな。一緒に散歩に出かけない?」

<つづく>