ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。現在は隠れゲイ@福岡。過去の思い出や現在のことを綴っていきます。

同性とのファーストキス<8>

 確かにA君の言う通り、劇のオチとしては同性同士でキスする案は面白いかもしれない。でも同性同士でキスするのなんてみんな嫌だった。それに同性愛者のボクですら嫌だった。実際にはキスする二人のうち、ボクに関しては確定しているので、誰がボクとキスするのかを選ぶという問題だけだった。もし同性同士でキスをすれば、その日から同級生の間では「男同士でキスした人」という烙印を押させれるであろうことは想像できた。

「神原とキスするとか絶対に嫌だ……」

 誰かが呟いた。同じグループになっている顔ぶれを見てもボクの好きな相手はいなかった。ボクも含めてクラス内のイケてないメンバーが勢揃いしていた。そりゃ……ボクだって好みのタイプがいればキスも悪くはなかったけど、それでも劇中の衆人環視の状態でキスはしたくなかった。それにその場にはN君もいる訳で、好きな人の前で、好きでもない人と演技とはいえキスするなんて辛かった。

「ジャイケンで決める? 負けた奴が神原とキスするってことでいい?」
「そうだね。そうしようか……」

 みんな気が乗らないけど、諦めた雰囲気になって輪になってジャンケンを始めた。

「最初はグー。ジャイケンポン!」

「よっしゃー」とか「げぇ」とか叫び声が聞こえた。ボクは誰とキスすることになるのか、固唾を飲んで見守った。何度かの勝負を重ねて、最後まで負け残った生徒が決まった。K君という天然ボケのキャラクターで、ボクと同じくらいの身長も背も低くて、目立たない生徒だった。ボクらは同じクラスというだけで、特に仲がよい訳ではなく二人きりで話したこともなかった。ジャイケンに最後まで負け続けた彼はヒキった顔をしていた。ボクはなんて声をかけたらいいのかわからなかったけど慰めに声をかけた。

「じぁ……よろしくお願いします」
「あっ……うん。よろしく」

 ボクらはお互いの唇を見ながら、お互いがキスする姿を思い浮かべて憂鬱になっていた。

<つづく>