深夜のカミングアウト<2>

 それにしても高校時代、ホモのキャラクターを散々に演じてきたけど、社会人になってから、それが役に立つとは思わなかった。

「○○さん(男性)って可愛いですよね」
「○○会社なら、○○さん(男性)が一番カッコよくないですか?」
「○○さん(男性)の○○(体の部位)って、見てると萌えますよね」

 やけくそに近いけど、こんな発言が次々とボクの口から出て来た。ちなみにボクの外見は、かなり真面目そうに見えるようだ。そんな真面目そうな人間が、さらりとこんな発言するのだ。聞いている方は、かなりギャップがあるようだ。ただ……これらの発言も本気で思っている訳ではなくて、あくまで冗談で言っていると思わせなくてはならなかった。ホモだと疑われて逃げ道が無くなったボクの取った道は、本当にホモだけどホモを装った人なのだ。一度でもそのキャラクターを演じ始めたら引き返すことはできない。

 そもそもボクは本当にホモなのであって、それなのに何故かホモではないと思わせるためにホモの演技をしていて、ただホモの演技をしておるのか、素のホモの自分が出ているのか、自分でも分からなくなる時があった。あぁ……文章を書いていて、自分でもこんがらがってくる。そしてもう一点、ややこしいのが、ボクは付き合っている彼女がいることになっているのだ。一度ついた嘘を否定することはできなかった。存在しない彼女の嘘をつくくらいならホモの演技をしている方が楽だった。
 
 自分から招いた種とはいえ本当に複雑だ。とにかく同僚には、ボクはホモでなくてホモを装っている人という認識でいてもらう必要があるのだ。

 それに先輩が指摘するように、確かに新人の男性社員には優しかったと思う。でもそれは男性社員が若い女性社員に優しくするのと同じようなものだ。ボクは同年代か年上の方しか恋愛の対象にはならない。でもやっぱり若い子は可愛いのだ。若い子に限らず好みのタイプから仕事を頼まれるとノリノリで優先度を上げて対応している自分がいる。

<つづく>