ちょっと変わった観光方法

 今回は同性愛とは全く関係のない話だ。

 実は二日前から福岡以外の場所にいる。転職前の職場は客先のシステム導入がある度に出張に行っていた。転職後は仕事で滅多に福岡から出ることがない。仕事で県外に行くのは久々だ。

 福岡から遠く離れた日本海側の街に来た。  

 有名な観光地や城下町があって海外の観光客も多くてホテルを予約するのが大変だった。今日は昼までに仕事を終わらせて、こっそりと観光をしてきた。

 ただ……観光と言っても、ボクの観光方法は普通と違うのかもしれない。

 ボクの観光はまずは地域の美術館に行く。そして「常設の展覧会」や、「巡回中の展覧会」を鑑賞する。「常設の展覧会」は、その美術館に来ないと見ることができない、美術館が所蔵している地元の芸術家の品々が見れる。「巡回中の展覧会」は、全国各地を巡回している展覧会だけど、九州に巡回しない展覧会に当たるとラッキーだ。それに美術館が立っている場所や内装も注意深く見るとなかなか面白い。もはや美術館巡りは、ボクの趣味の一つになっている。

 散々……美術館で時間を潰した後、よくあるような有名な観光地に行く。そして極めて手短に観光する。

 そして……ここからが変わっていると思う。観光地を歩きながら、ボクが「こっちの道が気になるな……」と興味を持って歩いていると、観光客が通らないような路地裏ばかり歩いてしまう。そして気づくと地元の人たちが日常生活している民家が並んだ場所に入り込んでいる。

 ずっと前から考えていたのだが、ボクは観光地が好きではないようだ。どの飲食店も高い割に全く美味しそうに見えないし、お土産物も似たような店ばかりだ。観光客も自分の顔を自撮り棒で撮っていたり(バックに観光地の風景もないような写真を何枚も撮って何がしたいのか分からないけど)、見ていてうんざりしてくる。もちろん城や庭園や神社には、美しくて鑑賞する価値があるものもあるので、そういった物はなるべく見るようにしている。ただ……どこの観光地は、似たような所ばかりで飽き飽きしている。

 ボクは地元の人たちが住んでいる民家が並んだ路地裏が好きだ。何が面白いかというと、いろいろと想像ができるからだ。

 ここに住んでいる人たちが毎日どんな生活を送ってるんだろう?  

 自分がここに生まれて住んでいたら、どんな人生になったんだろう?

 そんなしょうもないことを考えながら、路地裏を歩くのが楽しくてしょうがない。見知らぬ家や公園や神社を見ながら、自分が子供になって遊んでいる姿を思い浮かべる。そして子供達が遊んでいる姿や、母親と子供が一緒に歩いている姿を見ると、なんだか切なくなってくる。

 観光客寄せのために、無理やり作られた古そうな町並みより、人の生活が染み付いた雑多な町並みの方がボクは好きだ。庭やベランダには布団や洗濯物も沢山干しているし、玄関には鉢植えが所狭しと並べられていたり、網戸から透けて見える台所には、調味料や皿が沢山置かれていたりする。なんだか……そんな町並みを見ていると、人生の集積を見ているようだ。ただ観光客が来ない、そういった道を歩いていると、地元の人からはジロジロと不審な目で見られることが多い……

 結局、行きはタクシーで行ったのに、帰りは一時間以上かけて裏路地を歩いてホテルまで帰って来てしまった。この文章もたった今、ホテルに戻って風呂から上がってから書いている。

 ちょっと変わった観光方法だけど好きなものはしょうがない。