同性愛者の住宅事情<6>

 長々と話が逸れてしまった。そんな訳で色々と悩むところがあって、選択肢の中から無難な「賃貸アパート」を選んでいる。

 ボクだっていつか結婚する可能性があるかもしれないし(今のままだと限りなくゼロに近いけど)、もしもの時に、家族構成が変わって不動産を変更する必要が発生した場合、売るのに困るような中古マンションもめんどくさい。恐らく女性と結婚はないと思うけど、希望は捨ててないのだ。それに……男性と同棲という可能性だってきっとあるはずだ(今のままだとこっちも限りなくゼロに近いけど)。

 他にも「賃貸アパート」を選んだ理由がある。ボクは転職はするつもりはないけど、ボクが勤務している組織自体がいつ潰れるかわからない。そんな時に不動産を所有していると、転職先を探す地域が限られてしまうからだ。

 ただ……ボクが住んでいる今の部屋は少し一人暮らしには広すぎるのかもしれない。今は約60㎡だけど、引っ越しする前は約75㎡の部屋に住んでいた。部屋を探す際に、案内してくれた不動産会社の男性の営業からも不思議がられたっけ。

「一人暮らしで……かなり広い部屋に住まわれるんですね……」 
「一人暮らしでここまで広い部屋に住む人っていないんですか?」 
「滅多にいないですよ。ちょっと神原さんって変わってらっしゃいますね」
「そうですか……」

 つまりボクはこの男性の営業から変人って思われてるのかな。ボクとしては福岡に来る前までは、東京の家賃が高くて狭い部屋に住んでいたこともあり、家賃が安くて広い部屋に住めるという誘惑に勝てなかったのだ。

 やっちまった……

 それにしても約75㎡は広すぎた。反省して次に引っ越した場所は少し面積を狭くしたけど、それでも一人暮らしにしては広いようだ。ボク以外の入居者は、みんな夫婦か子供もいる家族ばかりだ。どうやら一人暮らしはボクだけのようだ。

 そういえば……こんな歌があったな。

 未来の僕をみつけたくて 無理した広めの部屋
 何にもない淋しいだけ 君を感じたくなる
 曲名:僕をさがしに/ 歌手:石川よしひろ

 ボクは家具を入れてもガラガラの部屋に立って、この歌を自嘲気味に口ずさんでいた。

<つづく>