ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

仕事に生きる同性愛者<12>

 転職して数年が経った。

「神原さんって朝来てから毎日同じ順番で行動してるね」

 声をかけてきた方を見ると、50代中盤の女性社員(失礼だがおばちゃんと呼ぶ)が、二人して笑いながらボクを見ていた。ボクの転職後の職場は年配の女性も多くて、簡単なパソコン操作も覚束ない人が多い。「パソコンが起動しなから助けて!」と呼ばれて行ってみると、モニターの電源ボタンを押してパソコンを起動しようしている。「昨日はどうやって電源を入れたんですか?」と質問すれば、「あっそうか……昨日はこっちのボタンを押してた」と、パソコン本体の電源ボタンを指差してる。お茶目な?おばちゃんたちだ。システムエンジニアの仕事をしながら、パソコン教室の先生のようなことも片手間でやっている。

「それ……前の職場でも全く同じこと言われましたよ」

 ボクはパソコンを操作する手を止めてそう言った。おばちゃん達の言葉を聞いて前の職場のことを思い出していた。

「あははっ!そりゃ言われるだろね。本当に毎朝やること決まってよね。そういえば神原君って結婚してるの?」

 先日、別の女性からも同じことを質問されて、ボクは既婚というデマが広まってるらしい。過去に何度も独身と説明してるのに、定期的に既婚説のデマが発生する。ボクとしてはデマを信じてもらった方がありがたいのだけれど。

「いえ……一人で家事でも何でもできるので結婚してないですよ」
「あたしがもう少し若かったら旦那と別れて結婚してあげたのに!」
「そうそう。理想的な結婚相手だよね。家事とかみんなやってくれそう!」

 これって褒められているのか微妙だなと思っていた。おばちゃんたちは次々と話しかけてきた。ボクは仕事を止めてコーヒーを飲みながら、冗談を言ったりしておばちゃんと雑談を続けていた。

 ボクは転職しても相変わらず仕事は好きだ。

 ただ、若い頃に比べて仕事を詰め込んで孤独感をごかすようなことはしなくなった。

 子供の頃から傷つくことを沢山言われてきたからなのか、ずっと人間が嫌いだと思っていた。人間が100人いても分かり合える人は1人か2人ぐらいしかいないと思っていた。でも年齢を重ねて30歳になった頃にふと気がついた。

 ボクって……自分が思っているよりも人間が嫌いじゃないかもしれない。むしろ人間が大好きなのかもしれない。

 職場の同僚と仕事をしたり話したりするのが楽しくてしょうがない。はっきり言ってしまうと職場の同僚が大好きだ。毎朝「今日は○○さんは休みか寂しいな……でも○○さんは出勤してるから楽しみだな」とか考えながら通勤している。振り返ると転職前の職場も好きな同僚が沢山いた。でも……若い頃のボクはそんなことに気がつく余裕もなかった。年齢を重ねるごとに身近に好きな人が沢山いること、好きな人が沢山いたことに気がついた。きっとボクが積極的にカミングアウトする必要性を感じなかったのも、身近に好きな人たちが沢山いるからだと気がついた。

 人に孤独感を与えるのも人間関係なのかもしれないけど、その孤独感を癒すのも結局は人間関係だと思う。

 仕事が落ち着いたからなのか趣味はいくつかできた。でも相変わらず歳を重ねても休日の過ごし方はうまくない。いつの頃からなのか「早く仕事が始まらないかな?」から「早く職場の仲間に会えないかな?」という気持ちに変わっていた。この気持ちは、きっと歳をとるごとにもっと変化していくものだと思う。でも今は仕事も好きだし職場の仲間も大好きだ。

 この文章を打ちながらも、「明日は誰と話せるかな?」と楽しみにしている。さて……早く寝て明日も仕事を頑張ろう。

<終わり>