彼から悲鳴のような書き込みがあって投稿の流れが一瞬だけ止まった。きっと投稿している人達も何が起こったのか状況が把握できなかったに違いない。ボクは更新ボタンを連打して次の投稿を待っていた。
あいつのアドレスに大量のイタズラメールが届くように仕込みました。
しばらく待っていると誰かがそう書き込みをした。ボクはようやく状況が飲み込めた。
ウケる!俺もやろう。
俺はあいつのアドレスをま○まぐに登録しよ!
その書き込みを見て状況が飲み込めた人達から「俺もやろう」といった書き込みが続けて投稿された。これは後で知ったんだけど、こういった迷惑メールが大量に届くように嫌がらせするサイトがあるようで登録されると短時間に大量の迷惑メールが届くようだ。ちなみのメールマガジンサイトも他人のメールアドレスを入力して購読ボタンを押すと、勝手に購読登録が完了できてしまうと後で知った。よくよく考えたら彼は使い捨てのメールアドレスではなくキャリアのメールアドレスでやり取りしていた。そう簡単にはメールアドレスの変更はできないだろう。
お前らすぐに止めないとマジで警察に通報するぞ!
しばらくしてまた彼から書き込みがあった。どうやら彼は大量のイタズラメールに相当困っているようだ。そりゃこれだけの人数から大量にイタズラメールが届くように登録されたらパンク状態だろうなと思った。
通報していいよ。俺らもお前から送られた頭のおかしいメールが大量にあるから訴えてやる。
同意です。殴るとか殺すとか書いたメールが大量にある!
彼の警察に通報するという脅しは全く通じなかった。むしろ彼の脅しが逆に火をつけた感じになっていた。それから数十分経っても彼から書き込みはなく反応が途絶えてしまった。
スッキリしたー
静かになったね。
彼を叩いていた人達も満足したようだった。この喧嘩はどこまでいったら終わるんだろうと思って見守っている時だった。それから掲示板の更新ボタンを押すと、彼の投稿した内容が根こそぎ削除された。彼の投稿文にぶら下がっていた大量のコメントも同時に消えてしまった。
あぁ……掲示板の管理人が削除したんだ!
数十個のコメントが投稿された掲示板が突如消えてしまった。ボクはしばらく更新ボタンを押して続きの投稿がされないか見守っていたけど、それから彼に関する投稿がされることはなかった。管理人は気がついて削除したのか、誰かから通報があって削除したのか分からなかった。もしかして投稿していた人達が二度と同じ端末から投稿できないように何らかの制限をされたのかもしれない。
これで喧嘩は終わったのかな?
ボクは自分の携帯電話を眺めながら彼からメールが送ってこないかドキドキしていた。それにもしかして彼がメールのやり取りをした全員に対して仕返しをするのではないかと思っていた。同じように大量のイタズラメールが届くように嫌がらせしてくるとのではないかと思っていた。
でもそれは杞憂に終わった。それから数日経っても、もう彼からメールが送られてくることはなかった。彼があの出会い系の掲示板に投稿することはなかった。
<つづく>