ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

現在進行形の同性恋愛<9>

 その日は仕事の関係で研修会があった。その研修会はボクと古賀さんで導入したシステムにテーマが関連していたので業務命令で一緒に参加することになっていた。 

 ボクらは天神の地下鉄空港線の改札口で待ち合わせしてから一緒にホームに降りた。途中の西新駅で降りてそれから15分くらい歩いて百道浜の研修会場に向かうことになっていた。いつもだったら福岡市の地下鉄空港線は博多駅や福岡空港に向かう方面は混んでいるけど百道浜のある姪浜の方面は空いていた。ボクは全く違う沿線に住んでいて普通は地下鉄を使うことはなかったけど、休みの日に百道浜にある博物館の展覧会をよく見に行ってたので大体の交通事情は分かっていた。それなのに今日に限って運悪く車両故障があったせいで混んでいた。僕らは人に流れに従って一緒に電車の中に雪崩れ込んだ。お互いに降りる駅は分かっていたけどなるべく側から離れないようにしていた。

 普段は空いてゆったりできるせいか電車の中は少しだけ殺伐としていた。ボクらは吊革を持つこともできず乗車口の近くで押し合いをしながら立っていた。気がついたらボクは彼と向き合いう形で身体がぴったりと接していた。ほとんど抱き合っているという形に近かった。ボクの顔のすぐ側に彼の顔があった。

 彼と触れっている部分が暖かいな……

 こんなことを書いてると電車の中で変なことをしている人と思われるけど、他の見知らぬ人と触れ合っているところなんて何も感じなかった。ただ彼と触れ合っているところが特別に暖かく感じた。恥ずかしい話だけど彼の暖かさが自分の中に雪崩れ込んできたみたいに体全体が暖かくなった。ボクと身長も同じくらいだったからすぐ側に彼の顔があった。電車が揺れる度に彼の髪か肩がボクの顔に触れていた。なんだかとてもいい匂いがした。

 数センチ先に彼の唇があるんだよね……

 ボクは平静を装うのに必死だった。顔を上げるとすぐ目の前に彼の唇があると思った。ぼくは目だけ動かして彼の方を見た。彼と目があったけど目が「きついですね」と訴えていた。

  ボクがこんな変なことを考えてことを知ったら幻滅するのかな?

 彼と目を合わせながらそう思った。でも自分の素性を隠したままで彼と体を接するなんて、こんな偶然が起こるのを待つしかなかった。

  ボクが彼以外の人に触れ合っても何も感じないように、彼にとってはボクは見知らぬ人と同じ存在なのかな?

 電車が揺れる度に、ボクらは体が触れ合っては離れて彼の存在が否が応でも感じられてしまった。ボクは恐る恐る勇気を出して少しだけ彼に寄りかかった。彼は支えてくれるつもりなのかボクの体を優しく掴んでくれた。それから赤坂駅、大濠公園前駅、唐人町駅と次々と駅に止まっては人が出て、また流れ込んできた。押し合う中で見知らぬ人と触れあるよりも知り合いと触れている方が安心できるのか彼の方からもボクにしがみついてきた。「これは偶然だよね……」と思いながらボクは少しだけ彼を抱きしめた。

 ボクは彼がゲイなのかノンケなのか分からなかった。でもどうでもよくなった。それまでは彼の精神的な面が好きだった。「彼みたいな人になりたい」という思いが強かった。でもボクは彼の肉体的な面まで好きになっていた。彼がゲイだろうとノンケだろうと好きという事実には変わりなかった。

<つづく>