ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

現在進行形の同性恋愛<12>

 ボクは店を出てからずっと何も考えずに急いで歩き続けた。そして彼らが絶対に来ないであろう場所まで離れてからようやくゆっくり歩き出した。スーパーマーケットは駅近くにあった。ボクは住宅街に向かって歩いていたので駅に向かって帰宅中の会社員や学生と次々とすれ違った。すれ違う人の中には同じ職場の人もいて精神的に余裕もなかったけど作り笑いをして挨拶をしながら通りすぎた。

 さっきの二人……幸せそうだったな……

 少しすれ違う人がまばらになってからボクは彼らの姿を思い返しながら思った。きっと彼なら暖かい家庭を築くんだろうなと思った。そしてそれはボクが望んだものだった。社会人になってから「この人はカッコイイ」と思える人に何人か出会っていた。でも「この人と一緒に暮らしたい」という思いを強く抱いたのは彼が初めてだった。いや……そもそもこんな感情を抱いたのは彼が生まれて初めてだった。ボクらは考え方も価値観も似ているしお互いに助け合って生きていけると確信があった。ただそんな確信も無意味だった。

 きっとあの2人はすぐに結婚するだろうな……

 彼は年齢的にも30代後半になっていたから早めの結婚を望むだろうと思った。短くて半年か長くて1年ぐらいで結婚すると思った。ボクは心の中で密かに考えたことがバカバカしくて恥ずかしくなった。彼を好きになってからずっと彼と一緒に食事をしたり。一緒に家事をしたり。一緒にどこかに出かけたり。休日をのんびりと家で過ごしたりと想像ばかりしていた。すれ違う下校中の学生たちが笑いながら話している姿が、何だか自分の考えを見透かされて笑われているような気分になった。彼はやっぱり同性愛者じゃなくて異性愛者だったんだと思うと、ゲイのボクでもお互いに両思いの関係になれる可能性があると、はしゃいでいた自分のことが気持ち悪くなった。それに電車の中で彼に寄り添ったことも彼にとっては気持ち悪いだけだったし、彼が少しだけ寄り添ってくれたことなんてただの勘違いだと思うとやるせなくなった。

 でもでも……彼がゲイじゃないとは確定した訳ではないよね……

 さらに情けないのが可能性は限りなく少なくなったのにも限らず、ボクはまだ彼がゲイかもしれないと疑問を抱いていた。過去に知り合ったゲイの中にも、自分がゲイであることを隠して女性と付き合ったり結婚したりしている人は沢山いた。もしかしたら彼も同じなのかもしれないという限りなく少ない望みを抱いていた。ただ女性と付き合うという選択をしたゲイの人がカミングアウトする可能性は限りなく少ないということも分かっていた。もし彼がゲイだったとしても女性と付き合いという選択をした時点で、その女性を傷つけることは絶対にしないだろう。

 買い物を途中で止めてしまったので晩御飯に食べるものがなかった。とても料理を作る気分にはなれなかったので近くのコンビニに行って弁当を買って食べることにした。滅多にコンビニ弁当を食べないので適当に目についたのを買った。そしてトボトボと家に帰ってからニュースを見ながら弁当を食べた。一人で食べるコンビニ弁当は味もパサパサして美味しくなかった。

 今頃、古賀さんはあの女性の手料理を食べてるのかな……

 そう考えるとますます目の前の弁当に食欲がそそらなくなった。やっぱり適当に余ったもので自炊するべきだったかもしれない。もしくは外食でもして気分を紛らわせればよかったのかもしれないと思った。古賀さんは実家に住んでいるから彼女の家にでも行ってご飯を一緒に食べてるのかと思うとそれ以降のことを想像するのが怖くなった。でも先のことを想像をしないわけにはいかなかった。

 やっぱりご飯を食べた後に一緒に寝てるよね……

 ボクはそれ以上の考えるのを止めようとした。でも止めることはできなかった。
  
<つづく>