ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています。毎日更新中@福岡

現在進行形の同性恋愛<16>

 ボクの目の先には年配の夫婦がいた。その2人を見た瞬間に古賀さんの父親と母親であることが分かった。彼らは結婚式の親戚や招待客に緊張しながら挨拶をしていた。

 2人ともなんて彼に似てるだろう……

 父親の顔立ちや背丈は古賀さんとそっくりで、きっと彼が60歳後半になったらこんな風になるんだろうなと思わせる姿だった。母親の柔らかい人あたりや話し方は古賀さんとそっくりだった。彼が生まれて来て今のような人間になってしまった理由が分かったような気がした。「そっか……彼も60歳の後半になったらああなるんだ」と思うと、父親の姿から目が離せなくなってしまった。きっとボクと彼は職場の同僚という関係以上になることはもうないだろう。結婚して子供が生まれれば家庭のことに手一杯でなおさら忙しくなるだろう。だから60歳後半の彼の姿を知ることはないだろうと持った。父親だったけどボクが知ることのできない未来の彼の姿を見た気がした。
 
 しばらくして結婚式が始まった。

 結婚式が始まって式が進んで行く中、タイミングを見計らって食事をしている新郎新婦のもとに挨拶に行く人が出てきた。多くは新婦側の出席者ばかりだったけど、中には新郎側の出席者も混じっていた。次々と人が出てきて新郎新婦と写真を撮ったりしていて途切れることがなかった。わざとタイミングを少しだけ遅れせることにした。それから人が途切れた瞬間を見計らってビール瓶を片手に新郎新婦の側まで歩いていった。

「おめでとうございます!」

 実はずっと心の中で決めていて、ボクはこの一言だけを伝えるためだけに式に出席していた。

「ありがとうございます。こちらはシステムの仕事をしてる神原さん」

 彼はボクのことを新婦に紹介してくれた。

「はじめまして」 
「知ってます。うちの部署によく来ますよね」

 新郎と新婦に視線を注がれてドキドキしてしまった。

「お幸せに!」

 そう言いながら二人のグラスにビールをついだ。

「ありがとうございます」

 それだけ伝えて自席を戻りながら振り返ると2人で笑いながら話をしていた。

 お幸せに……
  
 席に座って仲良く話している2人を見ながらそう思った。

 

 ボクは結婚式が終わってから会場だったホテルから出て振り返った。今日の夜はこのまま夫婦でホテルに泊まることになっていると聞かされていた。やっと結婚式が終わって今頃は部屋に戻って2人でぐったりしている姿を想像してしまい笑ってしまった。

 それにしても素敵な結婚式だったな……
 
 彼らがデートした時に撮影した写真を加工した動画が流れたり(後で知ったんだけど全て動画編集ソフトを使って彼が自作していた。それにホテルから借りるとお金がかかるので機材も含めて、かなり彼が頑張って自前で対応していた)、無駄な出し物もなくて2次会もやらなくてシンプルで素敵な結婚式だった。そんなシンプルさも彼らしく感じられた。それに出席者に楽しんでもらおうという2人の気持ちがいたるところに感じられた。最後に出席者に対して挨拶する彼の姿もいつになくキリッとして真面目なんだけど見ていてハラハラさせられた。でもかっこよかった。

 お幸せに……

 ホテルの窓の明かりを見ながら、どこかの部屋に泊まっている2人にもう一度伝えた。とても寂しかったけど、もう全ては終わってしまった。

<つづく>