LGBTブームと気持ちの変化<6>

 ボクは彼らの側を通り過ぎて「冷泉通り」側に移動した。そして公園の入り口近くの鉄柵に座って小説を出して読んでいた。まだ開始時間の13時まで余裕があるからそのまま時間を潰すことにした。

 それから12時半が近づいた頃だった。ボクの目の前を少し年上の男性と女性が通り過ぎた。そして目の前で立ち止まって辺りを見渡して「あっ!いた!」と指差しながら歩き出した。ブランコの前にいた二人組の元に近づいていったところを見ると、「この人たちも関係者なのかな?」と思った。なんとなく貫禄というか雰囲気があって、今回のイベントを取りまとめをしている団体の代表者のようにも思えた。ボクは無関係を装ってそのまま本を読み続けた。

 しばらくして集まっている彼らの方を見てみると、一気に人数が増えていて恐らく10人くらいになっていた。どうやら大半が知り合い同士のようで、みんな仲良く雑談しているように見えた。なんだかそのせいか気後れしてしまって絶対に声をかけるのは無理だなと思った。LGBTのイベントなので男性もいれば女性の参加者もいた。

 しばらくの間、みんなで集まって雑談していたけど、13時を過ぎた辺りから撮影を始めるために移動を始めた。ボクはグランド側で撮影をするんじゃないかな?と思い、前もってグランド側に移動してたんだけど当てが外れてしまった。グランドではサッカーをして遊んでいる子供もいたし、もともとそのつもりはなかったのかベンチ近くの芝生に移動していた。おかげでボクのいる位置からは50メートルくらい離れてしまった。

 でもこれだけ距離があれば大丈夫だよね……

 そう思って小説を閉じてカバンに入れてから、鉄柵に座ったまま彼らが撮影するのを遠くから見ていた。遠く離れた場所でも音楽(やる気あり美『ピー・エス・エス』)が微かに聞こえてきた。

 ボクは今までLGBTのパレードなど行ったこともなかった。ニュースで福岡市のLGBTのパレードをしている光景を目にすることがあったけど、遠い世界の出来事のように思っていた。初めてこういった集まりをしている人たちを自分の目で見た。遠くから見ていると色々な感情が沸き起こってきた。

 何だか自分と生きている世界が違うような気がした。

 この人たちが……例えばこのサイトの文章を読んだらどう思だろう。

 中学時代や高校時代までは共感してもらえるかもしれないけど、でも大学時代からのことは共感してもらえそうにないと思った。

 ゲイ向けの出会い系の掲示板に書き込んだり、有料ハッテン場など出入りして見知らぬ男性と肉体関係を持ったりしているボクのことを汚れてるとか思われそうだ。
 
 ボク自身はずっと前に進んで来たつもりだったんだけど、大学時代から「地上の世界」から離れて暗い「地下の世界」に潜ってしまっていたような気がする。公の場で自分の正体を晒している彼らを見ているとそう思えた。

 結局……ボクは今何がやりたいんだろうか? 今後どうなっていきたいんだろうか?と考えていた。

 自分の気持ちに正直になって考えてみた。

 ボクが今……一番望んでいることは……それは……

<つづく>