ゲイブログを書く前後<29>

 これまで長々と文章を書いてきたけど、あと少しで終わるので付き合って欲しい。

 もう一つ忘れてはいけない出会いがある。田亀源五郎さんが書いた『ゲイ・カルチャーの未来へ』という本だ。

 現在、田亀源五郎さんが書いた漫画本の『弟の夫』がドラマでも放送中だ。このサイトで文章を書き続けていて「本」で影響を受けたのが、このサイトを始めるきっかけになった石川大我さんの『ボクの彼氏はどこにいる?』と、このサイトを続けていく意味を教えてくれた田亀源五郎さんの『ゲイ・カルチャーの未来へ』だった。
 
 この本は一言で言ってしまえば、「ゲイとして生きている人生の先輩からの指南書」だと思う。

 この本の細い感想はレビュー記事に書いているので、そちらを読んで欲しい。この記事では、まだ触れていない箇所について書いていく。この本はボクにとっては驚きの「言葉の爆弾」で溢れていた。特に印象に残っているのが以下の文章だ。

LGBTブームの是非という議論についても、当事者内からすごく出ていますよね。それが商業主義的であるとか上辺だけのものであるとかいうのもあれば、いや、ないよりはマシだろうというのもあって。ただ、私がそこで重要だと思っているのはーーーこれが仮にブームだとして、ブームが終わったときに、何か形の残っているものを次の世代に残せているか残せていないか。それがもっとも大切だと思います。同時代に生きている人たちが批判し合ったり賛同し合ったりするよりも、次の世代がそれによって生きやすくなるということのほうが重要なのです。でも、LGBTブームを巡る当事者の議論にはそういう発想が全然ないように感じるのです。これが問題だと思います。(P.196)

 この文書を読んだ時、ボクは防具なしの状態で、田亀さんから思いっきり竹刀で脳天を叩かれたように感じた。きっと自分が何かを受信する側から、発信する側に立っているから刺さる言葉が多いのだと思う。このゲイブログを書き始める前だったら何も感じなかったのかもしれない。

 ボクは「次の世代の何かを残す」なんて考えながら文章を書いたことがあったかな? いや……全くなかったよな。

 このサイトに書いている文章は、ボクが「読みたい文章」と「書きたい文章」で綴られていて、誰かに共感して時間つぶしになってもらえれば、特にそれ以上は何も望んでいなかった。

 きちんと次の世代の人たちに形として残していかないといけないよ!

 田亀さんから「そんなことじゃダメだよ!」と本を読みながら何度も怒られたように感じた。田亀さんたちの世代から、次の世代をゲイとして生きている人たちに対する叱責と激励の暖かい言葉だと感じた。ボクは竹刀で叩かれた頭を冷やしながら反省していた。

 きっと……ボクのようにゲイであることを隠して生きている人たちが沢山いるはずだ。だったら自分の周辺で起こった出来事や、そこから感じたことを文章に残しておくことで誰かの役に立つことがあるかもしれない。

 おこがましいかもしれないけど、そんなことを思いながら文章を書くようになった。今まで自分のことだけを中心に文章を書いていた。もちろん自分のことを中心に文章を書くことも重要だと思う。でもこの本を読んで、始めて自分の書いた文書が他の人に与える影響について意識するようになった。

 ボクは今月末に「ある場所」に行くつもりだ。

 そしてそこで起こった出来事や感じたことを、きちんと文章に残しておこうと思う。そうして文章にして書き残しておくことで、もしかしていつか誰かが読んでくれて何かのきっかけになるかもしれないと思っている。

 ゲイとして生きる「ボクと同世代」の人たちのためにも。

 ゲイとして生きる「ボクより年上世代」の人たちのためにも。

 ゲイとして生きる「ボクより若い世代」の人たちのためにも。

<つづく>