小説家の仮想空間カムアウト<6>

僕は男性でありながら男性を愛する人間、即ち、同性愛者です。

冒頭のカムアウトした文章を読んで、

あぁ……やっぱりそうだったんだ。そりゃ……ホモのボクが主人公の心理描写を読みながら、自分と重ね合わせてしまうぐらいだから、やっぱりホモだよね。

それくらいの感想を抱いたくらいで、特に驚くこともなく冷静だった。ただ、ボクは浅原さんのカムアウトした事実よりも、カムアウトした背景に関して書いた文章を興味深く読んでいた。そして意外な点に気がついた。

あれ? 浅原さんって、ボクと意外と似ているかもしれない。

そう思った。

それまで「ボクと浅原さんは似てる点はないだろう」と思っていたから意外だった。

そういえば、「似てる」と言えば、某ゲイブロガーの方から、コメント欄上で「浅原ナオト」と「神原隆臣」を間違えて書かれる事件が起こった。でもそれは「神原」と「浅原」の2つの名字が似てるから、取り前違えられただけと思っていた。

浅原さんがカムアウトする前から、ボクの中で「浅原ナオト」への妄想は留まることなく進んでいた。

長身で細マッチョのイケメン男性。中国の高級ホテルの最上階に泊まっている。シャワーを浴びてバスローブを羽織って出て来る。部屋にはjazzが流れている。ワイングラスを片手に摩天楼を眺めながら執筆する。そしてベッドの上にはBL本が平積みされているというアンバランス。

そんな「浅原ナオト」の姿を、ニヤニヤ笑いながら妄想して遊んでいた。

だからカミングアウトした背景の文章を読んで、「自分と似てる」と感じたのは意外だった。

細かい点を挙げるとキリがないけど、特に決定的だったのは以下の文章だった。

そう……ボクも初めてパレードの映像をテレビで見た時、

「気持ち悪い」

と思った。

「ボクとこの人たちとは同じゲイだけど全く違う」と思った。

初めて見たパレードの映像は海外のものだった。

「まさか国内でパレードをやったとしても、こんな気持ち悪い格好をする人はいないよね」と思った。「あくまで海外の事情があってパレードをしているだけで国内とは違う」と思った。まだボクが中学時代か高校時代のことだった。

それから時が流れて大人になってから国内でパレードをしている映像を見た。

海外ほどでないにしても、気持ち悪い格好をした人たちがいた。ボクは驚いて、パレードの存在を見て見ぬ振りすることにした。ボクは浅原さんと違って、彼らと自身を別物だと考えることができた。きちんとパレードの存在に向き合い始めたのは、このゲイブログを書き始めてからだった。

そして先日パレードに行った時。

テレビの映像を見た時と同じように、何人かに対して「気持ち悪い」という印象を抱いた。

特にボクと同じゲイの人が、タイツを履いたり女装したりして、露出度の高い姿を見ると「この人は何をやってるんだろう?」と思った。別に仮装をすること自体を否定はしないけど、ボクには理解できなかった。

この気持ちを書くのは初めてだ。ずっと書かないで心の中にだけ秘めていた。

<つづく>