僕が一番欲しかったもの<7>

タイトル:京都市内で
今から犯して欲しいです。京都市内の○○○○に場所があります。 
165.55.34 投稿者:ゆう

この人って……つい先日に会った人じゃないだろうか?

ボクはある書き込みを前にして、リストと見比べていた。投稿者の名前は違っていた。でも以前に書き込まれた彼のプロフと似ていて、年齢は1歳ほど上がっていたけど、身長と体重は同じだった。なによりも待ち合わせとして書いている京都市内の場所が、彼が以前に指定した場所と同じだった。

恐らく彼だろうな。

彼と会ってから一ヶ月が経っていた。ボクはラッシュを吸って暴力的に襲って来た彼の姿を思い出していた。ただ、そのことに気がついたからといって、ボクにとってはどうでもよかった。もう彼とは会うつもりはなかったし、彼が誰と会おうと興味もなかった。

それから、しばらくして再び出会い系の掲示板の画面を見た。

彼の投稿の下に、2つほどコメントがついているのに気がついた。

へぇ……誰かと会うことになったのかな?

そんな風に悠長な気持ちで、彼の書き込みを開いた。そしてコメント欄の確認をしようとした時、少し様子がおかしいことに気がついた。

タイトル:注意してください!
この人は病気持ちです。注意してください。
絶対に会ってはいけません

その書き込みを読んで、ボクは愕然とした。

そして、もう一つほど書き込まれたコメントを急いで確認した。

タイトル:RE:注意してください!
こいつに病気をうつされた人を知ってます。みなさん注意してください。
書かれている年齢も嘘です!

目の前が真っ暗になった。

えっ……病気……病気って何? 何の病気なの?

それまで呑気に掲示板を眺めていたけど、その書き込みを読んで状況が一変した。

いやいや。そもそも書き込み主が彼とは限らない。もしかしたら違う人かもしれない。ボクの勘違いかもしれない。

そう思うことで、心を平静に保とうとしていた。

ただ「絶対に会ったらいけない人リスト」にメモしておいた、彼のプロフ見比べてもやっぱり似ていて、どう考えても彼本人の書き込みだとしか思えなかった。年齢が嘘という点も一致していた。

ボクは震える手で何度も更新ボタンを押していると、新しいコメントがついていた。

タイトル:RE:RE:注意してください!
その人の特徴は? 病気って何ですか? HIVですか?

まさにボクが訊きたかった質問を、別の人がしてくれた。ボクは固唾を飲んで、次の書き込みを待った。そして回答を待って何度も更新ボタンを押し続けた。

数分後、更新ボタンを押すと、書き込みが全て消された。

どうやら掲示板の管理者が投稿を全て消したようだった。誰が通報したのかは分からない。もしかしたら彼本人が消すように依頼したのかもしれない。

本当に彼は病気を持っているのだろうか? もし病気を持っているとしてどんな病気なのだろうか?

ボクが知りたいと思ったことは、全ては闇の中に消えてしまった。

<つづく>