絶対に会えてよかった<30>

そのコンビニで「ストッキング」を買ってもらえないかな?

メール相手との待ち合わせ場所は、京都市内の北部にある大きな通りに面したコンビニだった。

ボクは夜の23時過ぎに待ち合わせ場所に到着してから、原付をコンビニの駐車場に停めてから、相手に到着を知らせるためにメールを打った。

待ち合わせ場所のコンビニに着きました。

そのメールに対する返信が、冒頭のメールの文章だった。

えぇーええええええぇぇ。何じゃこのメールは!

と相手から送らて来たメール文面を読んで一頻り驚いてから、ボクはこのメールの文面が何を意図しているんだろうかと考えた。

メール相手はゲイ向けの出会い系の掲示板に書き込んでから知り合って、ちょくちょくメールをやり取りするようになっていた。それまでのメールでは不審に思うところは全く無くて、むしろ好感を持っていた。ボクと彼は掲示板上で知り合ってから、大学の授業の合間を縫って携帯メールでやり取りを続けた。ボクよりも四歳年上の大学院生だった。しばらくやり取りを続けて相手から「会ってみない?」と誘いが来てから約束の日時にコンビニ前に到着したところだった。

それまでのメールのやり取りでは「ストッキング」という言葉は、一度たりとも出てこなかった。

ストッキング……

そんなものを何でボクに買うように依頼して来るんだろうか?

ボクはあれこれ推測を巡らせた。

もしかしたら母親が使っているストッキングが古くなって壊れて予備も無くて、ちょうど買う必要があるのかもしれない。だからボクに買うように依頼して来たのだろうか?

いやいや彼はアパートで一人暮らしだと言っていたから、その線はないだろう。

もしかしたら彼は調教願望が強い人なのかもしれない。こうやって恥ずかしい命令を出して、それをボクに実行させて興奮しているのだろうか?

それまでのメールのやり取りは温厚だったけど、その線は少しはあるかもしれない。

もしかしたら彼はストッキングを自分で履きたい。もしくはボクにストッキング履かせたいという願望があるのかもしれない。

考えたくもないけど、どうやらこの線の可能性が一番高いように思われる。

うーん。どうしたらいんだろう?

どうしようか迷っていると携帯のメール着信音が鳴った。

お金は後で払います。

と続けてメールが送らて来た。

ストッキングなんて何の目的で使うんですか?

と相手に質問するのは難しかった。彼の意図を「知りたいという思い」と「知るのが怖い」という思いが交錯していた。

ボクはとりあえず買うにせよ買わないにせよコンビニに入ってから決めようと思ってドアを開けて店に入った。

<つづく>