絶対に会えてよかった<85>

恐る恐る手を伸ばして彼の身体を触れるとなんの抵抗もなく受け入れてくれた。むしろボクの方から触れなくても彼の方から積極的に抱きついてくれた。ほとんど年下から誘われることがないボクにとっては珍しいケースで驚いていた。


ボクと彼は布団に横になって小さい声で雑談をしていた。


彼の年齢は22歳。高校を卒業してから大学には行かずに地元で働いていること。電車に乗って有料ハッテン場に来ていること。翌朝の始発が動き出して帰る予定だということ。あくまで触り合いまでバックはできないこと。


そんな簡単な情報を彼から聞き出していた。それに対してボクの方は彼に情報を伝えなかった。どうせお互いに真剣に付き合うことになる可能性はゼロだと思っていたし、彼が痛がっているのを慰めてあげればよかった。慰めるついでに彼に手を出してみたいという欲望もないわけではなかったけど、どうせ断れるかその場の関係で終わると思っていた。


彼は甘えるように強く抱きついてきたので、ボクの腕をそっと彼の首に腕を巻いて抱きしめて上げた時のことだった。いきなり彼の身体が「びくっ」と飛び跳ねた。「あれ? 今の驚いたような反応は何だったの?」と不思議に思った。でも、いきなりの反応に不審に思いながらも「まぁいいや」と思いなおした。


それにしても子犬や子猫のように甘えてくる彼を抱きしめてあげながら、


やっぱり年下は可愛いな。


とは思った。そして「この子と付き合ったら、どんな感じになるのかな?」と妄想してみたけど、「いやいや。そんな展開はありえない」と思った。心のどこかでこれ以上は関係が深まることがないと諦めていた。


ボクはしばらく抱いてあげた後、彼の機嫌が直っていることをを確認して「もういいよね」と思った。彼の腕をほどいて身体を離してから「じゃあ。そろそろ行くね。じゃあバイバイ」と言って立ち上がった。彼は「えっ?」と驚いた態度を取ったけど、ボクとしてはそれ以上に深く彼との関係を深く踏み込むつもりはなかった。


ボクも年下の子に対してそこまで興味を持っていなかったし、どうせ年下の子がボクに対して興味を持ってくれることはないだろうと強く思っていた。


ボクは彼を残したまま立ち上がって個室からさっさと出ていった。


それから10分くらい経って同じ個室に戻ると、さっき無理やりバックをしようとした人と同じくらいの40代中盤くらいの男性が布団の上に座って彼を背中から抱きかかえていた。そして彼の下半身を優しく触っていた。


相手が見つかってよかったね。


そんなことを思いながら、個室部屋をのぞいていると彼と真正面からバッチリと目が合ってしまった。彼は「一緒に仲間に入って触って欲しい」という感じで、ボクに甘えるように腕を伸ばしてきた。


<つづく>