ゲイショップの思い出<5>

「住吉の『コンボイ』に行ってみない?」

今となってはボクと彼のどちらが先に言い出したのか分からない。
ただボクらの間で、そんな意見が前触れもなく出てきた。

あるライブを観に行った帰り道。ボクらは天神に戻ってきたところで「どこかで食事でもして帰ろうか?」と言っていた。そこから何がどうなったのか分からないけど、「そういえば住吉にアダルトショップがあるよね?」という話題になって「一緒に行ってみよう!」と盛り上がってしまった。

恐らくその場のノリと言う奴の影響だと思う。

念のために『住吉』がどんな所なのか説明すると、東京でいう所の『新宿2丁目』。大阪でいう所の『堂島』という感じで、福岡の『住吉』にはゲイバーや有料ハッテン場などゲイ関連のお店が多い。

このサイト内でも『住吉奇譚集』というタイトルで有料ハッテン場を一日で二軒はしごした話を書いた。少し話が逸れてしまうけど、福岡に住んでいるゲイの人にとって地元の話である『住吉奇譚集』は好きな人は多いようだ。メールで「一軒目が◯◯(店の名前)で二軒目が◯◯(店の名前)ですよね?」と、よく予想して送ってくれる人がいるのだけれど、一軒目の正解者は半々。二軒目は正解者はゼロという状態だ。やっぱり二軒目に関しては、お客の年齢層が高めだったし、このサイトの読者で行った人はいないようだ。

話を戻す。『コンボイ』は住吉にあるゲイ向けのアダルトショップだ。

『ルミエール』と同じようなゲイ関連のアダルトショップのようなもので、リサイクル品を主に扱っているらしい。以前からそういった店が住吉にあるのは知っていたけど、今の時代なら「わざわざ恥ずかしい思いをして店員と対面して買わなくてもインターネットで買えばいい」と思っていたので「行ってみたい」という願望は皆無に近かった。それに、いつものボクなら「アダルトグッズなんて興味がないです」と言って即座に拒否するけど、この当時は少し状況が変わっていた。その件は少し後に書くことにする。

一人なら絶対に行く気にはなれないけど二人で行ったら楽しそう。

きっとボクらはお互いに同じ気持ちだったに違いない。

天神から住吉は歩いて行ける距離にある。ボクらはある店で餃子を食べて、ニンニク臭い息をたぎらせながら、そして性欲もたぎらせて那珂川沿いを歩いた。ちなみにどちらもアルコール飲料を飲んでない。

いい年齢の大人がアダルトショップに行くのに盛り上がるのも恥ずかしいけど、こういった悪乗りも学生気分を思い出してとても楽しかった。ボクらはスマホを片手に地図を見ながら住吉通りに出た。

ちょうど裏路地から住吉通りに出たところに『コンボイ』があった。

店の前に立つと、さっきまでの盛り上がりは消え去ってお互いに緊張していた。ボクは「入ってみましょうか」と言って店のドアを開けた。

<つづく>