ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

絶対に会えてよかった<100>

同年代の男性からの抗議を受けて「そんなにいびきが五月蠅ければ、もっと離れた個室で寝ればいいのに」と思ったのだけれど、よくよく彼の説明を聞くと困っている理由も納得できた。

その日は客が多かった。

ボクの実感では、冬の寒い日になると有料ハッテン場のお客は多くなる。恐らく気温が低くなると人肌が恋しくなるのではないかと推測している。ボクらがいた個室の隣の部屋以外は全て使用中の状態だった。彼の介抱をしている間に、いつの間にか、満員御礼どころか札止めになっている状態で、通路に寝転がって抱き合っている人たちもいた。

そんな状況の中、これから盛り上がろうとしている時間を迎える前に、彼のいびきの爆音が鳴り響いていた。

同年代の男性は唯一空いていた隣室で寝ていたらしく、それでいびきに対して抗議していた。ついでに言うと、彼の寝ている個室と、ボクらがいた個室は薄いカーテンで仕切られているだけで、個室とは書いてみたものの、実質は大部屋に近い状態だった。

ボクは「すみません。この人知り合いなんですけど、酔っぱらって寝たまま起きないんです」と説明した。同年代の男性は「疲れているから寝たい」と言うので、ボクらは二人で個室に入った。そして枕元に座って「起きてください」「起きないと寝過ごしますよ」と二人がかりで声をかけた。そんな言葉を数分間かけ続けてみたものの、やっぱり彼が起きる気配はない。

その間も入口付近で立ち止まっている人たちから「うるせー」という声が聞こえた。

自分の親を見ていても思うけど、加齢とともにいびきの音は五月蠅くなっていく。加齢に酒もプラスされたいびきは、とても五月蠅かった。

そのうち同年代の男性は「もう……いいです。ありがとうございました」と言って諦めてくれた。

ボクらはいびきの音を聞きながら、なぜか可笑しくなってお互いに笑い合った。その後、廊下にしゃがんで雑談した。ボクらの間にはなぜか連帯感のような感情が生まれてしまっていた。1時間近くお互いの身の上話をして終電が近くなって来たので、ボクは「もう帰りますね」と言って立ち上がった。部屋を出る前に振り返ると、同年代の男性は、どこかの個室から使用していない毛布を引っこ抜いてきて、丁寧に床に敷いていた。それから床の上にくるまって寝転がっていた。どうやら通路で寝るつもりのようだった。

その後、しばらくしてから10歳年上の彼と再会した。

ボクは、あの祭りの日の夜の店内の状況を彼に説明してあげた。

<つづく>