おのぼり二人紀行<3>

僕は飛行機が苦手だ。

 

ただ昔から飛行機が苦手だったのかというと、そうでもない。

 

以前、羽田発で福岡空港着の飛行機に乗った時、離陸前には爆睡してしまって、途中で覚醒した時には関西上空くらいにいて、その後、再び爆睡して、次に目が覚めた時、着陸して乗客が立ち上がって荷物を取るバタバタという音で目が覚めたこともあった。それくらい慣れていて緊張感なんて全くなかった。

 

そんな感じだったけど、2年前に北陸に出張に行った時から一変してしまった。

 

乱気流の影響で機体が大きく揺れてしまう事態に遭遇して飛行機に対する認識が変わった。他の乗客からは悲鳴が聞こえて、機長の「安心してください」というアナウンスもむなしく響いていた。僕も「墜落する!」と心配になって、「このまま彼氏もできないで人生が終わるのか」とか「このままブログの更新止まっちゃうのか」とか、あれこれ考えたりもした。なんとか無事に福岡空港に着いたものの、それ以降、飛行機が苦手になってしまった。

 

それからは「できる限り飛行機は使わない」と決めた。

 

それで去年の5月。TRPに参加するために東京へ行った時も新幹線で移動した。

 

彼からLCCのチケットを予約したと連絡が来た時、

 

「僕だけ新幹線で行ってもいいですか?」

 

と言いいたい気持ちが沸き起こってきた。

 

彼と一緒に東京へ行く日付が近づいてくるにつれて、「旅行を楽しみして高鳴る気持ち」と、「飛行機に乗るという憂鬱な気持ち」が渦巻いていた。「飛行機の事故」についてネットで検索したりした。そんな感じで精神的にジタバタしたけど、前日になって、ようやく無駄な抵抗を諦めた。「もし死ぬにしても今は独りじゃない」と思うようにした。

 

5月24日の旅行当日。

 

AM 5時10分に起床して、バスに乗って最寄りのJR駅まで移動した。そして途中の駅で快速に乗り換えて博多駅までたどり着いた。当初は彼と博多駅で待ち合わせして福岡空港まで一緒に行こうと待ち合わせしていたのだけれど、博多駅のホームに降りた瞬間。

 

1本早い地下鉄に乗ってしまったから『東比恵』で降ります。

 

と彼からのメールが届いた。

 

「なんで落ち合う前に先に地下鉄に乗った!」と脳内で突っ込みを入れて、『博多駅』から『福岡空港』まで二駅しかないから、「そこまで行ったのなら途中で降りないで福岡空港まで行けばいいのに!」と、さらに脳内で突っ込みを入れつつも、わざわざ降りて待ってくれるのが嬉しかったりした。

 

先頭から2両目のベンチ辺りで待っています。

 

と、次に送られてきたメールに書かれているのを読んだ。

 

僕がホームに降りた場所は、最後尾の車両が到着する場所だった。出勤するサラリーマンの波をかき分けて先頭から2両目まで移動した。その後、地下鉄に乗って東比恵に着いた。列車の中から彼の姿を探していると、ホームの途中で注意深く、じぃぃーと車両を覗き込む彼の姿を発見したけど電車は止まることなく、あっという間に彼の姿は消えてしまった。

 

「こりゃ。車両を間違えたな」と予想していると、

 

3両目の間違いやった、、

 

と彼からのメールが届いた。

 

「知ってる」と、笑いながら脳内で突っ込みを入れた。

 

「◯番目の車両に乗ってます」と、車両を待ち合わせ場所に指定するのは難しい。以前も車両を待ち合わせの場所を指定したことがあったけど、途中の駅で車両の連結があって失敗に終わったことがあった。

 

だから最初から福岡空港まで行っとけばいいのにと思い直しつつ「旅行初日からグダグダだな」と思った。こんなことを文章に書くと、彼から「あぁー人のことをdisる。disる」と文句を言ってきそうだけど、このグダグダ感も楽しかったりする。彼とはそのまま同じ地下鉄の別の車両に乗って福岡空港のホームでようやく落ち合うことが出来た。

 

<つづく>