ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

おのぼり二人紀行<15>

僕らはイオンモールに入ってからベンチで休憩をした。

 

僕は座った途端、眠気に襲われてしまい壁に頭をつけたまま20分くらい仮眠した。その間、完全に熟睡してしまった。目が覚めて隣を見ると彼はスマホで何かの文章を集中して読んでいた。一方的に寝てしまったのを申し訳なく思いつつ「どこかでちゃんとした場所で休もう」という話になってイオンモール内の喫茶店に移動した。運動会の日だからなのか客は少なくて簡単に座ることが出来た。隣の席には、70代後半くらいの女性たちが座っていて、その隣の席にも同年代位の女性たちが座っていた。どちらのグループも知り合いではなかったみたいだけど、途中から両グループが合体して賑やかな雑談が始まった。

 

彼は向かいの席でウトウトし始めた。

 

僕はアイスコーヒーを飲みつつ寝顔を眺めながら隣の女性たちの会話に耳を傾けていた。彼は30分くらい仮眠してから目を覚ました。隣の女性たちは「また会いましょうね」と言って、それぞれのグループに分けて解散した。それから僕らは近く人がいなくなったことをいい機会にして、ゲイ関連の話題だったり、全く関係ない話題だったり、しょうもない雑談をしてのんびり過ごした。その後、16時くらいにイオンモール内の本屋に移動して時間をつぶした。ちょうど関東地方で少し強い地震があったみたいだけど埼玉県は震度1くらいだったので気が付かなかった。しばらく本屋をうろうろして「そろそろ涼しくなったかな」と言って出口に向かった。入り口付近で体操服姿の子供たちの姿が目についた。運動会が終わって家族連れで晩御飯を食べに来たみたいだった。

 

イオンモールから外に出ると16時半くらいだった。西日が少しだけきつかったけど、建物の影が伸びていたので、僕らは日陰を頼りに自転車を返却するために戸塚安行駅まで戻ることにした。ただ来た道とは全くの別ルートを通った。自転車置き場に到着すると17時20分くらいだった。既に駐輪場には誰もいなくなっていたけど、指示された場所に自転車を停めて鍵を箱に入れて返却した。駐輪場から出ると風も出て涼しくなっていて、屋外で活動するにはちょうどいいくらいの気温になっていた。「どこで晩御飯を食べよう」との話になり、まずは「電車の接続が良い川口駅まで移動しよう」との話になった。駅前のバス停から17時40分くらいのバスに乗って川口駅を目指した。

 

バスの中から景色を眺めていると、彼が「この辺まで自転車で来たことがある」と言い出した。ここから彼が東京で住んでいた場所までは20キロ以上離れていた。彼の説明によると帰り道には自転車のかごに大きな植物を入れていたらしく、往復50キロ近い道のりをよく自転車で走ったものだと驚いてしまった。過去に何度か書いているけど、僕はマイペースでちょっと変わった感じの人が好きなので、こういった話を聞くと「この人好きだなー」とぞくぞくしてしまう。

 

そんな話をしつつもバスの窓から外を眺めて、

 

彼にとって、この街は二度目になるのだろうけど、僕にとって二度目はないだろうな

と思った。

 

さっき自転車に乗っていた時も感じていたのだけれど、「もうこの景色をこうやって彼と一緒に自転車やバスから眺める機会は二度とないだろうな」と思うと寂しくなった。僕にとっては見知らぬ街なのだけど、誰かにとっては生まれた場所で、誰かにとっては育った場所で、僕にとって見知らぬこの街が、誰かにとっては大切な街なのだろうなと思いながらこの瞬間に目にする景色を忘れないように焼き付けていた。

 

<つづく>