「キャバクラなんて、そんなの最初から断って行かなければいいのに!」
翌日、ボクは会社に出勤してから同期の村上君に前日の出来事を話していた。同期の村上君は真面目で几帳面で潔癖症だから、そもそも誘われてもキャバクラに行かないのだ。いや……そもそも性格的にキツイ性格をしているので彼を誘う人はいないのだけど。彼は同期の中でも少し浮いた存在だった。ボクは彼の対極的な性格をしていて、真面目だけど適当な所もあり、のんびりした性格だから、なぜか彼とは相性がよかった。お互いに自分にはない面を持っているので、持ちつ持たれつな関係を築いていた。
ボクは一緒に飲んでいた同僚がきちんと出勤できるかどうか心配していた。それも村上君に相談すると、「ほっとけ」の一言で一蹴された。そして勤務開始のギリギリのタイミングで、青い顔をして部屋に駆け込んできた同僚達の姿を見て安心した。みんな前日と同じ服装だったから、そのまま朝まで遊んだに違いなかった。朝礼が済んで席に着くと、眠気MAXな顔をして恨めしそうにボクに言ってきた。
「お前……俺らを置いて先に帰ったろう?」
その言葉を聞きながら、ボクは「この人たち正常な意識があったんだ」と思った。
「いや……すみません。それであの後はどうしたんですか?」
「あの外人のねーちゃんと遊んで朝までバーで飲んでた」
「(内心:四十歳過ぎてる人もいるのに盛んだな)それはまた大変ですね」
「次も誘うから一緒に行こうよ」
「もう興味がないんであの手の店には行かないです」
「そうか……」
それきり会話する気力をなくしたのか追求が止まった。みんなパソコンの前に座っているけど、ぼぉーとした顔をしていて、退社時間が来るまで待っているようだった。ボクは村上君に倣って、きっぱりとキャバクラにはいかないと決めた。するとボクらのやりとりを聞いていた上司が言った。
「じゃあさ……今度は俺と新宿二丁目のゲイバーに遊びに行こうか? 前から思ってたんけど神原っておかまぽいとこあるし」
ボクはその発言を聞いてパソコンの前で固まってしまった。
<つづく>