ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています。毎日更新中@福岡

映画『渚のシンドバット』の感想

渚のシンドバッド [DVD]

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 映画『渚のシンドバッド』を観たので感想を書きます。この映画も『ハッシュ』『二十歳の微熱』と同じく橋口亮輔監督の作品だ。

 いつもは映画のあらすじを書いているけど、この映画に関してはメインの登場人物が6人いて内容が入り組んでいるのでAmazonのサイトを見て欲しい。

 舞台は橋口監督の故郷の長崎で、後半になってから長崎が舞台であることがわかるシーンがいくつか出てくる。吉田君の母親がバーのママで客の男と付き合ってたり、主人公が吹奏楽部でコンクールにバイトで行ったり、この辺は橋口監督のエッセーで読んでいると監督自身の人生を投影していることが分かる。

 この映画の気になったシーンやセリフに触れて紹介をしていく。

 まずは主人公の伊藤君の自宅に手紙が届けられるシーン。手紙の内容は以下の通りだ。

拝啓『新薔薇族』の交際欄を見ました。
当方五十三歳 ハンサム社長。
君を愛してあげたい。優しさには自信あり。吉報を待ってます。敬具

 手紙を送ってきたハンサム社長の写真が付いていた。この手紙を父親に先に読まれた伊藤君は精神科病院に連れていかれることになる。つまり父親にとってゲイは病気という扱いなのだ。

 ボクがゲイの世界に接触した時にはインターネットが既に始まっていたけど、それ以前の時代はゲイ雑誌「薔薇族」などの投書欄でゲイ同士の出会いを探していたようだ。この映画のように手紙を見られて親にゲイだとバレた少年が、きっと何人もいたんだろうなと思う。少し話がそれるけど最近、「薔薇族」の編集長をしていた伊藤文學さんの本を読んだ。「薔薇族」が創刊されて一部の普通の本屋に置かれるようになって、でもゲイの人たちは「薔薇族」をレジに持っていくのは相当にハードルが高く、店が閉店する前に駆け込みで買ったり、個人経営の小さな本屋で買ったり色々と苦労して買っていたらしい。伊藤文學さんの本の中で、本屋で「薔薇族」が欲しくて万引きして捕まり、そのまま親にゲイであることがバレてデパートの屋上から飛び降りて自殺した17歳の少年がいたことに触れていた。この映画(1995年公開)より10年以上前の出来事(1983年)だけど、ゲイの人たちの置かれた状況はそんなに変わらないだろう。ちなみに男性の精神科の先生役は、橋口監督が演じている(声のみ)。橋口監督は『二十歳の微熱』でも顔出しで出演していた。

 次に気になったシーンだけど……ボクのサイトの文章を読んでくくださって、この映画を観てていたら、当然にこのシーンには触れるよねと思ってる人もいるかもしれない。同性の吉田君が好きだと同級生から疑われた伊藤君が体操服に着替えてるシーンがある。同級生たちのセリフはこんな感じだ。

「おい伊藤。お前ホモなんだって」「乳首が立ってる!」「感じちゃってるの?感じてるの?」「シリコンとか入れたら合うと思わない?」「綺麗になっちゃうぞ。ニューハーフになったら。絶対に綺麗になるよね」「見られてるよ俺。愛されちゃってるんじゃない。やばいかな」「俺を愛しちゃってるの?」。「お前。どっちなの絶対掘られるほうだろう思うよな。教えて!」「おかまになったらどすんだよ。うつるだろ」

 周囲ではその同級生たちの様子を黙って見ている人もいるし、笑いながら見ている人もいる。え〜と情けないことにボクも中学時代からカミングアウトしてたので、ほとんど同じような状況でした。ボクに聞こえるようにあからさまに言われていて、伊藤君を見ていると、高校時代のボクってこんな状況だったんだなと思います(流石に股間を見せる同級生はいなかったけど)。ボクは彼らの言葉に反応したら負けだと思って、ひたすら無視していた。

 ちなみに主人公の伊藤君だけど、映画の序盤まで同級生の男子生徒同士の会話をジロジロ見ながら黙って聞いてるんだけど何だか自分と似ていると思って笑ってしまった。

 この映画では、相原さん(浜崎あゆみ)という同じクラスの女子生徒が出てくる。過去にレイプされたという秘密を持って転校してきて、同じくゲイであるという秘密を持っている伊藤君とお互いの精神科病院に通って出会ったこともあり心を触れ合わせていくことになる。ひょっとしたらゲイである伊藤君は女性に興味がないので、レイプされた過去を持つ相原さんに対して警戒しないで付き合いやすい相手だったのかもしれない。お互いに精神的な支えになっていく。このサイトに文章を書いて思うんだけど、ボクもカミングアウトして結構酷い目に合ってきてると思う。なんとか乗り切れてきたのは、同級生の中で何人かが普通に接してくれていたからだと思う。特に中学時代に好きだった同級生(N君)や高校時代に好きだった同級生(松田君)からもボクの好きだという気持ちに気づいてからも全く変わらないで接してくれたが大きかった。きっと伊藤君にとって相原さんは、特別な存在になっているのだろう。ミカン畑の話をするシーンの2人の表情が全てを物語っている。

伊藤「吉田がさ……吉田がどんな風に人を好きなるのか見たかったんだ」

映画の終盤で出てくるセリフだ。噛み砕いて説明すると、伊藤君(男性)は好きになった吉田(男性)が相原(女性)をどんな風に好きになるのか見たかった。このセリフ……高校生が言うセリフではないように思うけど、ちょっと分からないこともない。

 最後のシーンの吉田君と相原さんのシーン。実際に吉田君の言葉は相原さんの服を着て女装している伊藤君に浴びせられている。

吉田「俺はちゃんと好きなんだよ。友達とかそういうのじゃなく。ちゃんと好きなんだ」
相原「伊藤くんだってちゃんとあんたのこと好きなんだよ」
吉田「だってあいつは男だよ」
相原「男だから何よ?男じゃダメなの?」
吉田「男とは寝れないだろ」
相原「じゃあ女とだったら?」
吉田「寝れる」
相原「あたしとだったら?」
吉田「寝れる」
相原「あたしが男でも寝れる? 吉田くんあたしのこと好きになったんじゃないよ。あたしが女だから好きになっただけだよ」
吉田「最初から相原は女だろ?」
相原「やりたいだけなんだよ」
吉田「違うよ。違うよ。ただ好きなんだよ。俺だってどうしたらいいか分かんないだよ!」

  誰が誰を好きになる感情は、異性に対してだろうが同性に対してだろうが制御できない。この映画は全体的には、高校生同士の同級生の誰々が好きだとか。同級生に好きな相手をバラされたとか。大人になってみるとくだらないことで悩んでるなと思うけど、でも自分も中学時代や高校時代は似たようなものだったと思う。そう……今になって思い返せばホモだと言われて冷やかされたことも大半は笑い話に思えてしまう。もちろん何本かの針は刺さったままだけど。

 最後に蛇足ですが、この映画を見終わってから「あーとか!うーとか!」って言葉が口癖になってしまった。家で料理を作りながらら「あーとか!うーとか!」って独りで喋ってて自分でも怖いです(笑)

映画『ハッシュ』の感想

ハッシュ! [DVD]

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 映画『ハッシュ』を観たので感想を書きます。監督はゲイであることをカミングアウトしている橋口亮輔さん。既に橋口亮輔さんの映画は『渚のシンドバッド』『二十歳の微熱』『恋人たち』の3本を観ている。エッセー本も2冊ほど読んだ。

 この映画だけどゲイの人たちには有名で多くの人が観ていると思うので簡単に内容を紹介する。

 ゲイとしての生活にどっぷり浸かりながらペットショップで働く直也(高橋和也)はゲイの世界で生きていくことに不安や不満を漠然と抱えている。一方で土木関係の研究所で働く勝裕(田辺誠一)は、職場ではゲイであることを隠して生きている。そんな中で2人は出会って付き合いはじめる。歯科技工士として働く朝子(片岡礼子)は、通りすがりの若い男とセックスしたりして自暴自棄な生活を送っていた。ゲイカップルの2人は偶然出会った朝子の出現により関係が揺れ動きはじめる。朝子は勝裕がゲイだと知った上で、「結婚とか付き合うとかではなく(勝裕の)子供がほしい」と伝える。映画『二十歳の微熱』ではゲイの世界を扱っていたけど、主人公の大学生はお金を稼ぐためにゲイの売り専をしていただけで実際にはゲイではなかった。このハッシュにではゲイのカップルの生活を描くなど本格的にゲイの世界に踏み込んで触れている。ゲイ同士のカップルと赤ちゃんを産みたいという女性の3人の関係が描かれている。

 ゲイのカップルの直也と勝裕の出会いはゲイの集まる街(恐らく新宿2丁目)ですれ違って目が合ったところから始まる。具体的にどんな会話をしたのかは描かれずに、次のシーンではいきなり朝のベッドシーン後から始まる。出会ってから直也の部屋で2人が寝たことは分かるんだけどベッドシーンは全く描かれていない。

 この一連の場面だけど……きっとゲイが見たら思わず羨ましくて微笑んでしまうだろうなと思う。

 直也がベッドから起きると勝裕がコーヒーを入れるためお湯を沸かしている。勝裕は直也の部屋のポッドなど無断で使用したことを詫びるけど直也は戸惑いながらも嬉しかったはずだ。

直也「俺やるからいいよ。寒いから服着なよ」
勝裕「うん」

 そういって直也はコーヒーを入れるけど別の部屋で物音が聞こえる。恐る恐る直也は「どうした?」と訊ねる。もしかしたら勝裕が帰ろうとしているのではないかと不安になっている。すると「靴下〜あった!」と勝裕から反応がある。その声を聞いて直也はほっとして嬉しくてコーヒーを溢れさせてしまう。このシーンだけど映画の冒頭シーンとの比較できるように描かれている。映画の冒頭で直也の部屋に泊まった見知らぬ男性から「泊めてくれてありがとう」と言われ直也は携帯電話の番号を交換しようとするけど相手はさっさと部屋から出て行ってしまう。

 直也と勝裕の関係には継続性があるってことを描写している。恐らくノンケの人が見ても「だから何?」ぐらいに思われそうだけど、きっと2人の継続性を予感させる描写はボクも含めて多くのゲイの人には欲しくてたまらないものだと思う。

 この2人の関係は時間が経つにつれて深まっていく。次に2人が一緒に部屋にいるシーンではまだ直也の部屋のまま。この頃は2人はまだ同棲していないんだろう(勝裕の着ている他所行きの服でなんとなく分かる)。さらに後のシーンでは引っ越して部屋が変わっていて置いている家具で2人が同棲を始めていることが分かる。この辺はわざわざ言葉で説明しない方が色々と想像できて逆に面白かった。

 直也と勝裕の2人のゲイとしての認識の距離感も面白かった。直也はゲイバーに出入りしていて顔なじみも沢山いてゲイの世界にどっぷりはまっている。一方で勝裕はどちらかというとゲイの世界とは距離を取っているようで、職場にもゲイであることがバレないように気を使っている。サラリーマンの世界で隠れゲイとして生きている。このゲイの世界にはまっている度合いが2人の喧嘩の原因にもなる。

 特に家族や子供を持つってことに対する考え方にも違いが出ている。「幼い頃に父親を亡くしているから自分が父親になったところを想像したことがない」という勝裕の言葉に、直也は以下のように反応する。

直也「当たり前じゃんだってゲイなんだもん。だって男好きでしょ? 俺なんか初めからないもんだと思ってるよ。家族とかそういうの。だってさ俺たちみたいな世界って恋人と長続きするのなんて稀じゃん。一人でいる覚悟なんてなかったらやってけないでしょ?」

勝裕から「直也は強いよな」と言われて、直也は以下のように反応する。

直也「独りでいるのは嫌だから勝裕と一緒にいるんじゃん……」

次に別のシーンでは以下のようなやり取りがある。 

勝裕「俺はゲイかもしれないよ。いやゲイだよ。いやゲイだよ!そうだよ。だけどさ。だからってこういう風に生きなきゃいけないって決めつけるのはどうかな?だっていろんな枝葉があって俺な訳だし」
直也「枝葉ったってなんたって根っこはゲイでしょ?」

 ボクがどちらの考えに似ているかと言えば、きっと直也の考えとほとんど一緒だ。直也も勝裕も程度の差こそあれ、ゲイとして生きることに希望を見出せていない。この辺についてはちょうど来週辺りに別の文章で触れようと思っている。簡単に触れるけど、きっとボクが一番欲しいのは「分かち合う」こと。この映画の3人を見ていて、ずっと漠然と思っていた自分の欲しいものがはっきりと分かるようになった。

 2人は喧嘩もするけど仲直りして関係を深めていく。その深まっていく関係の中に、朝子も一緒になって仲を急速に深めていく。乗り気でなかった直也も赤ちゃんを作ることに徐々に真剣に考えていくようになる。ところでボクがゲイなのでゲイの話ばかり触れてきたけど、朝子役の片岡礼子さんはとても綺麗な女性だと思う。ゲイのボクが見ていてもそう思うから不思議だ。この映画のメインテーマは赤ちゃんを作ることなんだけど、最後まで3人の間に生まれる赤ちゃんは出てこない。その代わりにエンドロールで3人の赤ちゃんの頃の写真が出てくる。恐らく本当に3人の役者の赤ちゃんの時代の写真を使ったんだと思う。この映画を最初に観たときに、「あれ?最後まで赤ん坊が出てこないの?おかしいよね?」と疑問に思ってたんだけど、そのうちなんとなく意図が見えてきた。

 観終わってからずっと映画のタイトルの『ハッシュ(Hush)』の意味がずっと謎で気になってたんだけど、橋口亮輔監督のエッセー本に理由が書いてあった。「シッ!」の擬音語で「静かに」というサインの意味。静かにして欲しい理由は「赤ちゃんが寝てるから」だそうだ。それでメインテーマは『Hush Little Baby』。さっきも書いたけど、この映画では最後まで3人の間に生まれた赤ちゃんは出てこない。きっと人生をやり直そうとしている3人が赤ちゃんなんだと思う。

 この映画だけど簡単に答えを提示してくれていないように思う。

 家族とはどういうものなのか? 親子とはどういうものなのか? 

 それを各自で考えてみてと、きっかけを渡してくれような映画のようだ。

 

 

それでもボクは盗ってない<6>

 少し先の話になるんだけど、この水泳の授業と似たような困った行事があった。それは修学旅行だった。「なんで修学旅行が関係してくるの?」と疑問に思うかもしれないけど、問題は修学旅行のお風呂だった。こんなことを書いてると「ホモだから女の立場で男と一緒に風呂に入るのが抵抗あるんでしょ?」と思う人もいるかもしれない。ただ勘違いしないで欲しいのが、ボクは同級生と一緒に風呂に入っても気にしないけど、むしろ同級生の方が気にしている状態だった。

 どうやって風呂の問題を回避しようかな……

 修学旅行の当日を迎えるまで、心のどこかでずっとモヤモヤとした気持ちがあった。選択肢としては風呂に入らないぐらいしか思いつかなかった。

「神原さんは修学旅行自体よりも夜の風呂の方が楽しみなんでしょ?」

 親しい同級生からもそう言って冷やかされた。

「バレた? 実は楽しみにしてるよね〜」

 ムキになって否定すると嘘ぽくなるから、むしろ相手に合わせて冗談のように受け流していた。ボクの言葉を聞いて笑っている同級生たちを見ながら「そりゃ……水泳なら水着を着てけど風呂は全裸だから抵抗あるよね」と思っていた。

 そんなことを思いながら憂鬱な気持ちで宿泊先の旅館についた。そして旅館に着いて案内された部屋は2人部屋だった。ボクは部屋に入ってからある重大なことに気がついた。

 あれっ……部屋に風呂がついてるじゃん。

 先生は共同の露天風呂に入る時間を伝達していたけど、わざわざ露天風呂に行かなくても、各部屋についているユニットバスに入ってしまえばいいことに気がついた。

「露天風呂に入るのがめんどくさいから、この部屋の風呂に入るね」

 ボクはたまたま同室になっていた松田君に何気ない感じで言った。すると思わぬ返答が返ってきた。

「俺も部屋の風呂に入ろうかな。神原さんが出てすぐに入るから風呂のお湯は抜かないで残しといて」

 どうやら松田君も露天風呂に入るのがめんどくさくなったようで、部屋の風呂に入ると言い出した。ボクは風呂にお湯を入れて服を脱いで浸かった。風呂に入っていると廊下の方では「風呂に行こう」などと同級生達のにぎやかな声が聞こえていた。なんだかこっそりと部屋の風呂に入っている自分が情けなかった。でも露天風呂に入って同級生たちからよそよそしくされるのも嫌だった。きっとボクと目が合うとひきつった顔になるのが想像できた。

 ボクは風呂に入ったまま泣いてしまった。それは寂しかったからじゃなくて実は凄く嬉しかったから……

<つづく>

同性愛者の性長記録<16−3>

 しばらく何で寝たまま性液が出たんだろう呆然としていたけど、何だかこの行為に思い当たるものがあった。

 もしかして……これが夢精なのかな?
 
 同級生たちとの下ネタトークで「夢精」という行為があることを言葉では知っていたけど経験してはじめ本当の意味を知った。まさか本当に寝たままイってしまうことがあるとは思ってみなかった。ボクは性液をテッシュで拭き取ってタンスの引き出しの中から下着を出した着替えた。

 汚れた下着をどうしようかな……

 下着は汚くて臭いがするし洗濯機の底の方に沈めるしかなかった。ボクは下着を持ったまま部屋からこっそりと抜け出して親の前を盗んで洗面所に移動した。そして洗面所で下着を洗い流した。洗濯機を覗き込むと幸運なことに他にも洗濯物があったので底の方に沈めた。

 いったい新年早々に何をやってるんだろう……

 ボクは何食わぬ顔をして居間に移動して両親に年明けの挨拶をした。それから家族揃ってお雑煮を食べた。何だかお餅が伸びてベトベトしているのがさっき見た性液を連想させて気分が萎えた。食べて終わって自分の部屋に戻って椅子に座ってから夢精したことを思い返した。

 夢の中でも男と抱き合ってるところを想像するなんて、ボクって根っからのホモなんだな……

 夢という無意識の中でも男性を求めてイッてしまった自分に驚いていた。思い返すと何だか自己嫌悪になってしまった。ただ女性を求めてイってしまってもそれはそれで自己嫌悪になってしまいそうだ。

 でも夢精って意外と気持ちがよかったな……
 
 こんなこと書くと変態ぽい感じがするかもしれないけど正直な感想を書くことにする。現実世界では好きな男性と抱き合ったりしている所を妄想していても、心のどこかで「こんなことありえない」という思いも抱いていて自制がかかるんだけど、夢の中では自制は全くかからなかった。完全な自由だった。ボクは夢の中で好きな彼と擬似的にだけどセックスできた。今でも起きた後の興奮を鮮明に覚えている。とても嬉しかったけど、でもどこかで悲しかった。ノンケの彼とは現実世界では絶対にありえない出来事だったから。下着の処理はめんどくさいけどまた夢精してもいいと思った。ただ二度と高校時代に夢精することはなかった。

 年が明けて登校して教室でヨウスケ君を見かけると罪悪感が湧いてきた。

 ヨウスケ君……ごめんね!

 そう心の中で思っていた。まさか「いや〜実はヨウスケ君で夢精しちゃってさ!ごめん!ごめん!」とか漏らした日には彼から殺されるに違いない。

 でも夢の中なら誰にも迷惑をかける訳じゃないからいいよね……

 全く前後の脈略のない夢だった。でも夢の中なのに彼に抱かれた感触を確かに感じた。彼に抱かれた暖かさを確かに感じた。ボクはこの出来事を墓場まで持っていくことに決めた。夢精をした回数なんて正確には覚えていない。今までに3回くらいあったかどうかだ。ただ高校2年生の元旦初日にしてしまったこの夢精だけははっきりと覚えている。そして夢の中の内容まではっきりと覚えている。

 ボクは夢の中でも女性ではなくて男性を求めているだと知った。

同性愛者の性長記録<16−2>

 ボクは柔道場で同じクラスのヨウスケ君と向かい合って立っていた。どうして2人きりの状態で柔道場にいる展開になったのか分からないけど、信じられないことに目の前に大好きなヨウスケ君がいた。

 ボクは高校時代に2人の男性が好きだった。同じクラスの松田君とヨウスケ君。もちろん中学時代からカミングアウトしていたので2人ともボクが同性愛者だということを知っていた。ただ松田君と違ってヨウスケ君の方はボクとかなり距離を置いていた。彼も同性愛者に好意を持たれてどう対処したらいいのか分からなかったようだ。特に悪く言ってくることもなかったんだけど怖がって距離を取っていた。ボクは諦めて遠くから彼を盗み見るように眺めて過ごしていた。ヨウスケ君はボクよりも少しだけ身長が高くて細身だった。あまり目立つ風な生徒ではなくて成績もよくも悪くもなくて特にこれといった特徴もなかった。でも何となくボクの好みの外見だったようで、ほとんど話したこともないのに彼に惹かれていた。

 そのヨウスケ君とたった2人で柔道場に立っていた。ボクらは2人とも柔道部でも何でもないのに……

 ヨウスケ君は黙ったままボクに近づいてきて抱きついてきた。「マジかよ!」と思いつつ恐る恐るボクも彼の背中に腕をまわして抱きついた。そのまま彼はボクを押し倒して畳の上に寝かせて服を脱がせ始めた。ボクも夢中になって彼の服を脱がせた。それからボクらはキスしたりお互いの下半身を触り合いしたりした。お互いに興奮しているようで下半身は反応しまくっていた。

 なんだヨウスケ君もボクのこと好きだったんだ。あぁ〜最高に幸せだな〜

 ボクは彼に抱きつきながらそう思った。ボクらが脱ぎ散らかした服が畳の上に散乱していた。裸で抱き合っている最中に誰かが来たらまずいと思いながらも衝動が抑えられなかった。

 あっ……ヤバイ。気持ちよくて頭がおかしくなりそう。

 それからボクは絶頂を迎えた。まさか片思いで終わると思っていたヨウスケ君とこんな関係になるなんて夢にも思わなかった。

 あれっ……

 ふと気がつくと目の前には見慣れた風景があった。さっきまで柔道場にいたのに突然に移動してしまって戸惑った。それから時間が経つにつれて少しづつ状況が分かって来て、目の前で見ている風景が自分の部屋の天井だと気がついた。

 なんだ夢だったのか……正月早々にとんでもない夢を見ちゃったな。
 
 確かNHKのラジオで除夜の鐘を聞きながら寝ていて、そのまま途中で起きることなく朝になってしまったようだ。

 やっぱりヨウスケ君とあんなことできる訳ないよね……

 欲望丸出しの夢が恥ずかしくて一人で照れ笑いしてしまった。そして起き上がって布団をはぐろうとした時だった。ボクは下半身がなんだか湿っているように感じた。「何だろう?」と思いながらパンツの中にそっと手を入れると液体がついた。どこかで見慣れた白いベトベトした液体だった。

 もしかしてこれって性液?

 幸いにして性液はパンツの中だけで収まっていてズボンは湿っていなかった。

 そう忘れもしない高校2年生の元旦。ボクは生まれた初めて夢精してしまった。
 
<つづく>

この文章は以下の記事の間に入ります。書き忘れていたのを思い出したので、追加することにしました。書くのも恥ずかしい内容なので、わざと忘れていたのかもしれません(笑)

 

それでもボクは盗ってない<5>

 翌日、学校に行って体操服に着替えているといつものように冷やかされた。足の毛を切っているのに「ホモなのに毛が生えている」と言われた。とても悲しかったけどボクは聞こえないふりをして急いで体操服に着替えた。

 もうどうせ足の毛を切ってても言われるのなら、もう切らなくてもいいよね……

 そう思って切るのも止めた。

 梅雨の季節になると雨が降って体育の授業は中止の時になる時が多くなった。そんな時は教室で「保健」の授業があったんだけど、着替えるのを冷やかされなくて良かったと思う反面で、この授業も少しだけ憂鬱だった。保健の教科書の中で性の目覚めの話が出てくると、たいていは男性と女性との性の関係を前提に体育の先生が説明するんだけど、なんとも自分の居場所がないように感じた。

 やっぱり……男性で男性が好き自分って変わってるんだな……

 そう思っていた。男女の際どい内容が書いていて周囲の同級生は冷やかすことはなかったけど自意識過剰になってしまいなんだか教室に居づらかった。授業では男女の性に関する内容が多かった。ボクの高校時代にはまだ同性愛に関する記述は教科書のどこを探しても見つからなかった。まだ現在の保健の教科書ではLGBTに関して記載がないようだけど、近いうちにそういった内容が追加されることになるのかもしれない。そうなるとボクのようにカミングアウトしている生徒には非常にいづらい授業になると思う。

 そのうち梅雨が終わって夏が近づいてきた。夏が近づくと今度は水泳の授業が始まることになった。

 あぁ……水泳の授業かめんどくさいことになりそう……
 
 そう嫌な予感がしていると、すぐに同級生から予想通りの冷やかしをされた。

「そろそろ水泳の授業が始まるけど神原は楽しみにしてるんじゃない?」
「神原の前で水着はヤバイよね!」
「神原の水着姿を見たら俺もホモに目覚めるかもしれない!」

そういった内容の話し声や笑い声が微かに聞こえてきた。

あぁ……本当に馬鹿馬鹿しい!

 いつものように無視しながらそう思った。

 あんたらの裸なんて見たくもないんだよ。もう全てがめんどくさい……

 水泳の授業の1週間前ぐらいだった。もう彼らに冷やかされるのも嫌だったし、なんだか彼らの前で水着になるのも嫌だった。ボクはおずおずと母親に切り出した。

「来週から水泳の授業が始まるんだけど、授業がある日を休んでもいい?」
「何かあったの?」
「もう……めんどくさいから」

 そう目をそらしながら母親に伝えた。まさか学校でホモ扱いされて冷やかされてるなんて口が裂けても言えなかった。そんなことを伝えると激怒して学校に電話するかもしれなかった。

「いいわよ……」

 ボクのただらならぬ空気を察したのか母親は理由も訊かずにあっさりと欠席を認めてくれた。

 中学時代は気にしないで水泳の授業に出席してたのに、ボクは高校時代の3年間の全ての水泳の授業を休んだ。1日たりとも出席していない。別に苦手で嫌だから休んだのではなくて子供の頃から水泳を習っていてむしろ得意だった。もちろん同級生はボクが水泳の授業がある日をわざと休んでいることに気がついていた。でもそのことについては何も言ってこなかった。みんなもホモがいなくてほっとしていたのかもしれない。

<つづく>

いつも見ている風景<6>

 ボクは少し離れてから振り返ってあの店が入っている建物を見つめる。そこにはついさっきまで裸で寝ていたあの建物がある。ボクと同じ仲間が夜になると隠れるようにあの建物を集まって、明け方になると隠れるように店から出て街に消えて行く。みんな昼間は普通の人として生きているのに、なんて肩身が狭いんだろうと思う。

 きっと今もあの建物の中で、男同士が不毛な肉体関係を結んでいるんだろうな……

 そんなことを考えてしまう。あの建物の中で何が行われているかも知っている人は少ない。何も知らない酔っ払ったサラリーマン達が騒ぎながら建物を前を歩いて行く。

 一人で住宅街を歩いていると向かいからパトカーがやってきた。もしかしてさっき店から出たところを見られてつけてきたんじゃないかと思って、特に悪いことをしていないのに緊張してしまう。パトカーは息を飲んで緊張しているボクの側をゆっくりとしたスピードで通り過ぎて行く。目を合わせてなくても運転席と助手席に座っている警察官がじっと見ているのが感じられる。

 店で男と寝ただけで別に警察に捕まるようなことしてる訳じゃないのに……

 後ろめたいことをしていない訳ではないことも分かっている。決して誇れるようなことをしている訳ではないことも分かってる。やっぱり心のどこかで罪を犯しているような意識がある。これが男同士で寝るのではなくて男と女の関係で寝た後であればパトカーとすれ違っても緊張しないのだろうか。何事もなくパトカーが通り過ぎて思わず溜め息をついてしまった。

 ふと空を見上げると煌々と照る月があった。それからあたりを見渡すと大きなマンションやアパートが目についた。深夜遅い時間だから、ほとんどの部屋の電気が消されているけど、所々でカーテンの隙間から電気が漏れている部屋もある。

 あの明るい部屋の中では、夫婦や家族で一緒にテレビを見てたりするのかな……あの暗い部屋の中では、夫婦や付き合っているカップルが一緒に寝てたりするのかな……もしかしたら男と男が一緒に寝ているのかしれない。女と女が一緒に寝ているかもしれない。それに子供がスヤスヤと寝てたりするのかな……

 そんなことを想像していると夜中に独りで歩いている自分が情けなく思ってくる。ボクは急いで住宅街を歩いて家路につく。そして家に帰ってから寝巻きに着替えて少しだけテレビを見て心が落ち着いてから布団に入る。独りで入る布団はとても冷たい。

 結局、今日も独りで寝て終わるのか……
 
 ボクは真っ暗の部屋の中で、さっきまでいたあの建物を思い浮かべる。今この時間も、あの建物の中で男と男が寝ているだろう。今日は駄目だったけど、いつかあの店でずっと一緒に生きているような誰かに出会うことができないかなと想像しながら眠りにつく。

<終わり>