ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。現在は隠れゲイ@福岡。過去の思い出や現在のことを綴っていきます。

同性愛者が存在する確率<6>

「そういえば、他校の方まで広まってたんだけど、ボクがホモだって噂とか聞いたことがなかったの?」

 彼と会ってからずっと気になっていることだった。ボクと金子君とは中学生になってからは別の学校に通っていた。小学時代の同級生から街中ですれ違った時など、「神原ってホモなの?」と訊かれたことが一度や二度ではなかったからだ。

「噂で聞いたような気がする。でもまさか神原に限ってないだろうと思ってた。だって神原って小学生の頃から、クソ真面目で優等生だったよね。同性を好きになりそうな要素は微塵も感じなかったよ」

 確かに小学生の頃は、優等生だった気がする。それが中学時代からは、がけ崩れになって目立たない生徒になっていた。そんな情けない話は見栄を張って黙っていた。

「まさか……神原ってこっち側って公開してたの?」
「うん……」

 ボクは恥ずかしさのあまり、目をそらして照れ笑いをしながら答えた。

「それって無防備すぎるだろ……」

 金子君は心底呆れたような顔をしていた。

「今でも不思議なんだけど、なんで公開したんだろうね」
「そうか……こっちの人たちって隠してる人多いけどね。神原の小学時代の知り合いでも、結構こっちの人っているよ」
「ボクの知り合いで?」

 ボクは大学生になってから、地元を離れていたので全く心当たりなんてなかった。地元の同性愛者事情には無知だった。

「そうだよ。さっき俺のメールに書いてたでしょ? ○○君とか●●君って、あいつらこっち側だよ」
「えっ……そうなの?」
「神原の書き込みを見て、あいつらが『大学から帰省してるとか』プロフを変えて書き込んでるのかと思ったんだ。だから○○君とか●●君が書き込んだのかと思って訊いたんだ。二人とも地元に残ったままだよ」

 小学時代の○○君と●●君の顔を思い浮かべたけど、目の前の金子君と違って、全く女性らしい要素のない人たちだった。とても信じられなかった。なんで彼らの名前が急に出で来たのかと思ったけど、ようやく納得がいった。でも推測でゲイなん言うものではない。

「でもなんで、あの二人がこっちだって知ってるの? こっちの人っぽい仕草とかしてるの?」
「それは、あいつらとヤッたことあるから」

なるほど……それは説得力のある言葉だった。

「中学時代に○○君とは同じサッカー部だったんだ。俺が部室で着替えてるのをじっと見てたからこっちだって分かったんだ。それで誘って家でヤッたんだ。●●君とは掲示板の書き込み経由で、偶然に出会ったんだ」
「その後、二人とはどうしてるの?」
「何回かヤッたけど、そのうち疎遠になったよ」
「なんだか……ボクの小学校ってゲイの巣窟だったのかな」

<つづく>

同性愛者が存在する確率<5>

「そうなんだ……常連ばっかりなんだ」

 書き込みの件数が少ない掲示板だから驚きはしなかった。同性愛者の出会い系の掲示板なんて、よくよく見ているとわかるけれど、同じ人たちが毎日書き込みしているなんて日常茶飯事だ。

「それにしても神原って、こっちの人だったんだ。一緒にいたけど全く気づかなかった」
「ボクがこっちに目覚めたのは中学時代になってからだからね。小学時代は普通にクラスの女子に恋してたよ」
「今も話してて、こっちぽい全く感じはしないよね」
「それは大学に入ってから知り合ったこっちの人からもよく言われるよ」

 周囲に人目がある手前、隠して話しているけど、「こっち」というのは「ゲイ」と置き換えてしまって構わない。

「じゃあ……男も女もどっちもイケるんだ?」
「それが……中学時代に男を好きになってからは、一度も女に恋をしてない。というか……最近は、男にも恋愛感情を抱いてないよ」

 ボクは説明しながらも何だか虚しくなってきた。

「俺は小学時代からこっちだったよ。クラスの男子で好きな子がいた」
「ボクも知ってる子?」
「神原は知ってるよ。O君が好きだった」
「O君か!」
「神原はO君と仲が良かったでしょ。毎日一緒に遊んでたし見てて羨ましかったよ」

 ボクの父親が、O君の父親と同じ職場で、ボクはO君と仲が良かったのだ。小学時代は同性を好きになるということ自体に理解がなかったし、まさか自分が嫉妬心を抱かれて見られているとは想像もできなかった。

 そうか……O君が好きだったのか。

 実はO君には高校時代にキツイ言葉を浴びせられた記憶がある。

「ホモ! キモい!」
「死ね! こっち来るな!」 

 小学校の卒業以来、久しぶりに再会した際、そう言われたのだ。ちなみに言われた場所は、さっき金子君が待ち合わせ場所に指定したあの踏切だった。ボクは苦い思い出が沸き起こってきたけど、目の前の金子君には黙っていた。小学時代に好きだった男性とはいえ、O君からゲイであることを否定する言葉を浴びせられたなんて話を聞かせても気分が悪くなるだけだろう。

「神原は、まだO君を遊んだりしてないの?」

 目の前の金子君は興味津々に聞いてきた。

「まさか……小学時代の友達と遊んでないでしょ」

 遊べる訳がない……でも理由を説明する訳にもいかなかった。

「そうなんだ。地元でO君を全く見かけないけど何してるんだろ」

 O君のことを思い出しているのか、金子君は無邪気に笑っていた。

<つづく>

同性愛者が存在する確率<4>

 車の窓ガラスを下ろして、ボクの顔を見ながら運転席の男性が言った。

「見覚えがある……」
「ボクも見覚えがある……」
「もしかして神原だよね!」
「金子君だよね!」

 運転席には懐かしい顔があった。確か金子君とは小学生時代に五年生と六年生の二年間ほど同じクラスになったはずだ。

「寒いでしょ? 早く車に乗って」

 ボクが寒そうに立っている姿を見てそう言った。そして助手席の荷物をどけて、ボクに車に乗るように促した。ボクは少し躊躇しながらも促されるままに車に乗った。

「どこかで話そうか……どこがいい?」

 お互いに積もる話はあるけれど、とりあえずゆっくり話せる場所に行きたかったようだ。

「海沿いに○○喫茶があるよね。そこでどうかな?」

 ボクはこのまま車で話してもよかったけど、どこがいいかと聞かれたので近場の喫茶店に誘った。それになるべく知り合いが来ない店を選択した。

「分かった。○○喫茶ね」

 彼は車を運転し始めた。ボクは運転している彼の横顔をチラチラと見ていた。そして彼の小学生時代を思い出していた。小学生時代の彼は、なんとなく仕草や口調が女性ぽかったのを思い出していた。

 そうか……彼はゲイだったのか。

 ボクは彼がゲイだったと分かっても「なるほど」と納得していた。ただ大人になった彼の姿からは、そんな女々しさは消えていて、とても男らしい顔立ちになっていた。言葉遣いも普通になっていた。彼は隣の町内に住んでいて、歩いて十五分もかからない距離に住んでいた。確かお互いの家に遊びに行ったこともあるはずだ。彼の家の中の様子もなんとなく覚えていた。ボクらは特に仲が良い訳でも、悪い訳でもなかったはずだ。

「今、神原は何しているの?」
「三月で卒業するけど京都の○○大学に通ってる。そっちは?」
「俺はリハビリの専門学校に通ってる。俺も今年で卒業するんだ。神原は就職先決まった?」
「うん……東京の企業に決まった。そっちは?」
「俺は大阪の施設で働くことに決まった」

 ボクらは喫茶店に入って飲み物を注文するまで、本当に聞きたいことには触れないでいた。そして注文を終えたボクらは堰を切ったように周囲に聞こえないくらいの声でヒソヒソと話し始めた。

「もしかして神原ってあの掲示板に書き込むの初めてなの?」
「うん。それに実家に帰って、ああいった掲示板に書き込むこと自体初めてだよ」
「なるほどね。書き込みの文章を見ただけで新入りってわかったよ」
「そんなに……あの掲示板利用してるの?」
「うん。あの掲示板に書き込みしてる人って大体常連ばっかりだよ」

<つづく>

同性愛者が存在する確率<3>

絶対に知り合いかと思いますし、お互いに会うと気まずくなると思いますよ。会わない方がいいと思うけど……

 ボクはそうメールして打ち切ろうと思っていた。ボクだって相手が誰なのか好奇心はあった。でも恐怖心の方が勝っていた。相手が小学生時代に仲がよかった同級生の場合もあるだろうし、逆に仲の悪かった同級生の場合もあるだろう。どちらにせよ会いたい相手ではなかった。

会って話すだけでもいいから会いたい! お願いします!

 それから懇願するメールが何通も来た。ボクはつれなく返信していたけど、最後には相手の必死さに折れてしまった。

じゃあ……会って話すだけならいいですよ。
ありがとう。○○の踏切の近くの駐車スペースに行ける?

 その踏切なら歩いて十分もすればいける距離だった。

知ってますよ。歩いて十分で行けます。
俺は起きたばかりだから身支度をして家を出ます。二十分ぐらいで着くと思います。紺色の軽自動車が目印です。

 身支度を入れて二十分か……やっぱりかなり近くに住んでるみたいだな。

分かりました。じゃあ会って話しましょうか……絶対に知り合いだと思いますけど。
じゃあ!後でね。誰なのか凄く楽しみです。

 最後に彼から嬉しそうなメールを受け取って、ボクは出かける準備をした。ボクの両親は仕事で家にはいなかった。まだ外は肌寒かったので、ボクはコートを羽織って携帯と財布をポケットの入れて家を出た。親が戻るまでにはまだ五時間ぐらいは余裕がある。彼と話してから戻っても、親が家に帰るまでには十分に間に合うだろうと思った。ボクは住宅街を突っ切って国道に出た。待ち合わせの時間には余裕があった。だらだらとポケットに手を入れて歩いていた。この道を真っ直ぐに進めば待ち合わせの場所につく。

 ふと嫌な予感が頭をよぎった。

 よくよく考えてみると、待ち合わせの場所まで大きな道はこの一本しかない。平日の昼間だった。大人は仕事をしていて、子供は学校に行っている時間帯だった。こんな時間帯に道を歩いているボクの姿はかなり目立っていた。そして、きっと待ち合わせの場所に向かう彼もこの道を車で通るのではないか……という気がした。もし車が通れば、ボクの歩いている姿に気がつくだろう。

 待ち合わせの相手から一方的に顔を知られるのは嫌だな……

 ボクは慌てて住宅街の裏路地に身を隠した。そして不審者のように道路の様子をうかかがっていた。

同性愛者が存在する確率<2>

 ボクはパソコンの前で、掲示板に投稿する文章を考えた。

実家に帰省している大学生です。誰かメールでもしませんか?

 そうキーボードで文字を打ち込んで投稿ボタンを押した。ただ投稿してみたものの、特に誰かと会うことなんて考えていなかった。ボクには移動手段の車もなく、実家に帰省しているため場所もなかった。ただ暇つぶしにメールをする相手を探していた。掲示板に投稿して期待せずにいると、数分後にはメールの着信音が鳴った。その掲示板の投稿数から見て、もっと時間がかかると思っていたが、予想より早く返信が来た。

掲示板見ました。二十二歳です。こっちも暇なんでメールしませんか?

 ボクは相手の年齢を見て同じ年齢であることに驚いた。

メールありがとうございます。ボクも二十二歳です。○○市の○○駅の近くに住んでます。
おぉ!近いね。俺も○○駅の近くだよ。

 メールの相手が、同じ年齢の上に意外と近場に住んでいることが分かった。

奇遇ですね。こっちは○○駅から歩いて十分くらいの場所にいますよ。

 メールを送るとすぐに相手から返信があった。

もしかして同じ校区? ○○小学校じゃない?

 学校名を見ると、ボクの通っていた小学校だった。

○○小学校ですけど、もしかして同級生? 

 そうだったらすごい偶然なんだけど、どうしよう……知り合いに会うには気まずくてメールを返信するの止めようか迷っていた。ボクは小学生の同級生の顔を頭に思い浮かべて、それらしい人がいないか考えていた。返信を迷っていると、相手から続けてメールが来た。

もしかして○○君?

 メールの名前を見て、すぐに知っている同級生の名前だと分かった。しかもその名前の同級生は同じ町内に住んでいた。

○○君……知ってるけど違いますよ。
もしかしたら●●君?

 その名前の同級生も知っていた。同じクラスにもなったことのある生徒だった。

●●君も知ってますけど違いますよ。

 これは……メールの相手は確実に顔見知りだな。ボクはメールのやり取りを断ろうかと思っていた。

絶対に知り合いだよね。よかったら会わない?

 ボクはメールを受け取って、どう返信しようかと思っていた。

<つづく>

同性愛者が存在する確率<1>

 ボクは住宅街の裏路地に体を隠していた。その目の前の道路を紺色の軽自動車が勢いよく通り過ぎていった。車を運転している人の顔が見たくて目を凝らしていたのだけれど、あっという間で見えなかった。車が完全に去ったのを見届けて、裏路地から道路沿いの歩道に戻って、待ち合わせの場所までトボトボと歩き出した。歩いて五分もすると待ち合わせの踏切に着いた。車のエンジン音が聞こえて、踏切横の駐車スペースには、先ほど目の前を通り過ぎた紺色の軽自動車が停まっていた。引き返したい気持ちに駆られたけど、相手に対する好奇心が勝っていた。

 いったい誰なんだろう……

 ボクは恐る恐る車に近づいて、窓ガラス越しに運転席に乗っている人の顔を見た。運転席の男性もボクの顔を見ていた。お互いに目が合った。相手が誰かと分かるまで時間はかからなかった。

 

 これは社会人になる直前の出来事だ。

 まだ少し肌寒い風が吹く3月のある日のことだ。ボクは大学の卒業が決まって就職先も決まって実家に帰省していた。

 田舎の実家に帰省してもやることはなかった。大学生なので車も持っていらず、親の車を借りて出かけるのがせいぜいだ。でも田舎だから特に行きたい場所もない。退屈を紛らわすために、本を読んでいたけど、それも飽きてしまった。ボクは退屈しのぎにパソコンの前に座ってインターネットで検索していた。

「○○県 同性愛 掲示板」

「○○県 ゲイ 掲示板」

「○○地方 ゲイ 掲示板」

 どんなキーワードで検索してもヒットする数は少なかった。どの掲示板サイトを見ていても、関西とは違って書き込みの頻度も、極端に少なかった。

 やっぱり田舎だとこんなもんだよな……

ボクは落胆しつつも、気を取り直してある掲示板に書き込みをすることにした。

<つづく>

同性愛コンテンツに触れる勇気

 このサイトで、最近になってからコンテンツのレビューを開始した。同性愛に関する本や映画などを見て感想を書いている。

 このレビュー記事がなかなか苦しい。
 
 いや……正確には、レビュー記事を書くのはいいのだけれど、そもそものコンテンツを鑑賞するのが苦しいのだ。

 以前から、なるべく同性愛に関するコンテンツは見ないようにしてきた。それには理由があって、やっぱり自分のことと照らし合わせながら見てしまうからだ。それが嫌で逃げて来た。

 今もカミングアウトを題材にした映画を見ているのだけれど、数分ごとに停止して、テレビの前から離れて、皿を洗ったり、洗濯をしたりしている。話がなかなか先に進まない。本を読んでいる時も同じだった。もともと歴史関連の書籍を読むのが好きで(最近は日露戦争を題材にした本ばかり読んでいた)、同性愛を扱った小説を読み始めたのに、なぜか胸が熱くなってしまって、いつのまにか歴史本を手にとって読んで気を紛らせたりしていた。そして期間を置いて、熱が冷めた頃を見計らって読むのを再開していた。何度同じことを繰り返しただろう。馬鹿みたいだ。

 ボクには本や映画の中に出てくる同性愛者の考えや行動が、どうしても自分のことと重なって考えて過ぎてしまう。

 例えば、映画の中で同性愛者を演じる役者が、好きな男性をこっそりと見つめるシーンがある。その姿を見ていると、まるで自分の姿を見ているような気持ちになって、気持ちがざわついて落ち着かなくなる。ただ……それだけの仕草なのに、ボクはいてもたってもいられなくなる。こんな状態で、話が進むわけがない。

 自分が同性愛者であることを嫌でも再認識させられてしまう。

 でも……逃げないで向き合って行こうと思う。今年はこのサイト開始した。まずは一歩前進できたと思う。

 今年の下期の目標は決まった。同性愛関連のコンテンツに真剣に向き合って、もっと深く同性愛について知って、深く考えて行こうと思う。この苦しさは、今まで同性愛について向き合わないで、楽な方に逃げて来た自分への罰だ。