第1章 過去との決別

過去との決別<5>

僕たちは一緒に店を出たけど、既に終電も終わっていた。それに田舎町でタクシーもなかなか捕まらなかったので、駅まで歩くことになった。きっと駅まで歩けばタクシーが停まっていと思った。ほとんどの家の電気は消えて人影も無くて、街灯と信号機の灯りだけ…

過去との決別<4>

「そろそろ帰るね」 ボクは言った。高校生時代のカミングアウトを否定すること、松田君がどんな感じの大人になっていたかを確認すること、久しぶりに同級生と会う2つの目的は果たしたボクは家に帰ることに決めた。 「もう帰るの?途中まで送るよ」 他の同級…

過去との決別<3>

「はぁ?昔から冗談で言ってただけだよ。まさかそんなことするわけないから。男で抜くとか絶対するわけない。そんなのアホかキモいよ」 ボクは慌ててすっとぼけたフォローを入れた。迷惑をかけてごめんね。とりあえず松田君に、「もう君に恋愛感情は抱いてな…

過去との決別<2>

彼女なんていないし、今も男好きは治っていない。そもそもなんで中学と高校時代に堂々とカミングアウトしていたのか自分でもわからない。 「神原って◯◯君がカッコイイ!とか可愛い!とか公言してたよね?」「そういえば◯◯君から神原とよく目があうから怖いっ…

過去との決別<1>

「久しぶりに集まらない?」 大学卒業を間近に迎え、帰省していると高校時代の同級生からメールが来た。 「いいですよ。どこで待ち合わせしますか?」「高校の卒業式以来だね?○○駅前まで来れる?」 高校を卒業して、全く顔を合わせていなかった。いや、わざ…