同性愛者としての初体験<3>

 同じ大学にいた同級生がヒロト君でよかった。もし他の同級生だったら、「神原って相変わらず男が好きなの?」と質問されたかもしれない。そうなったら今まで同性愛者であることを隠してきた頑張りが無駄になってしまう。その点、同じ同性愛者のヒロト君は安心だ。恐らくヒロト君も一緒にいる二人の学生にカミングアウトはしていないはずだ。ヒロト君はさらに問い詰めてきた。

「卒業式が終わった後、すぐに帰ったでしょ?同じ大学になるから話したかったのに、気づいたら帰ってたよね」

 そういえば卒業式が終わった後、同じクラスで一番仲が良くて好きだった松田君にお礼と別れを告げて、すぐに帰ったのだった。

「ごめんなさい・・・」

 ぐうの音も出なかった。ヒロト君と話したいことが山ほどあったけど、ボクとヒロト君の会話が終わるのをお互い連れが待っていることに気づいた。それに次の授業も始まりそうだった。ヒロト君が携帯電話を取り出して言った。

「メルアドの交換できる?」

「いいよ」

 ボクらは急いでメールアドレスの交換をした。

「じゃまた後でメールするね?」

「うん待ってるから」

 そう約束してから、それぞれ次の授業の教室に向かった。授業中、ボクは嬉しくて笑顔になりそうなのを必死に堪えていた。高校時代とは違って、同性愛者として生きていくことの難しさを痛感していた。一緒に同性愛について話せる友達が欲しいと思っていたら、まさかこんなに身近にいるとは思っていなかった。嬉しさのあまり、もともと授業は聞いていなかったけど、本を読むのも手につかなかった。「ヒロト君はどこまで進んでるんだろう?彼氏とかできたかな?」と物思いに耽っていると、携帯電話がメールを着信した。「もしかしたら」と思って期待に胸を膨らませながら宛先を確認するとヒロト君からのメールだった。

<つづく>