同性愛者の性長記録<16−3>

 しばらく何で寝たまま性液が出たんだろう呆然としていたけど、何だかこの行為に思い当たるものがあった。

 もしかして……これが夢精なのかな?
 
 同級生たちとの下ネタトークで「夢精」という行為があることを言葉では知っていたけど経験してはじめ本当の意味を知った。まさか本当に寝たままイってしまうことがあるとは思ってみなかった。ボクは性液をテッシュで拭き取ってタンスの引き出しの中から下着を出した着替えた。

 汚れた下着をどうしようかな……

 下着は汚くて臭いがするし洗濯機の底の方に沈めるしかなかった。ボクは下着を持ったまま部屋からこっそりと抜け出して親の前を盗んで洗面所に移動した。そして洗面所で下着を洗い流した。洗濯機を覗き込むと幸運なことに他にも洗濯物があったので底の方に沈めた。

 いったい新年早々に何をやってるんだろう……

 ボクは何食わぬ顔をして居間に移動して両親に年明けの挨拶をした。それから家族揃ってお雑煮を食べた。何だかお餅が伸びてベトベトしているのがさっき見た性液を連想させて気分が萎えた。食べて終わって自分の部屋に戻って椅子に座ってから夢精したことを思い返した。

 夢の中でも男と抱き合ってるところを想像するなんて、ボクって根っからのホモなんだな……

 夢という無意識の中でも男性を求めてイッてしまった自分に驚いていた。思い返すと何だか自己嫌悪になってしまった。ただ女性を求めてイってしまってもそれはそれで自己嫌悪になってしまいそうだ。

 でも夢精って意外と気持ちがよかったな……
 
 こんなこと書くと変態ぽい感じがするかもしれないけど正直な感想を書くことにする。現実世界では好きな男性と抱き合ったりしている所を妄想していても、心のどこかで「こんなことありえない」という思いも抱いていて自制がかかるんだけど、夢の中では自制は全くかからなかった。完全な自由だった。ボクは夢の中で好きな彼と擬似的にだけどセックスできた。今でも起きた後の興奮を鮮明に覚えている。とても嬉しかったけど、でもどこかで悲しかった。ノンケの彼とは現実世界では絶対にありえない出来事だったから。下着の処理はめんどくさいけどまた夢精してもいいと思った。ただ二度と高校時代に夢精することはなかった。

 年が明けて登校して教室でヨウスケ君を見かけると罪悪感が湧いてきた。

 ヨウスケ君……ごめんね!

 そう心の中で思っていた。まさか「いや〜実はヨウスケ君で夢精しちゃってさ!ごめん!ごめん!」とか漏らした日には彼から殺されるに違いない。

 でも夢の中なら誰にも迷惑をかける訳じゃないからいいよね……

 全く前後の脈略のない夢だった。でも夢の中なのに彼に抱かれた感触を確かに感じた。彼に抱かれた暖かさを確かに感じた。ボクはこの出来事を墓場まで持っていくことに決めた。夢精をした回数なんて正確には覚えていない。今までに3回くらいあったかどうかだ。ただ高校2年生の元旦初日にしてしまったこの夢精だけははっきりと覚えている。そして夢の中の内容まではっきりと覚えている。

 ボクは夢の中でも女性ではなくて男性を求めているだと知った。