絶対に会えてよかった<78>

どんなに取り繕って書いても綺麗に書けない出会いがある。

ボクがゲイとして生きている中で一番に活動していた大学時代。やっぱりそういった人と何人も出会っていた。生まれて初めてラブホテルで肉体関係を持った相手も、そんな感じの相手だった。

例えば、これが有料ハッテン場での出会いだったら、あっさりと誘いを相手の断ることが可能だった。もともと店で偶然に出会っただけで、約束して出会った関係じゃない。どうせボクが断ったところで、すぐに他の相手が見つかるだろう。

ボクの中で相手の誘いを断る指針がある。

他の人と無防備な肉体関係を持っていないか。

そういった場面を目撃したら、好みのタイプでも断っていた。

病気などの持っているような感じの雰囲気はないか。

あまりに手慣れた感じだったり、清潔感がない人は断っていた。

相手の態度や雰囲気で何か引っかかるところがあれば、自分の性欲よりも優先順位を上げて断っていた。ただ、どちらにせよ初対面の相手と無防備な関係を持つ気はなかった。

有料ハッテン場であれば自分の意思で断ることができる。

でもゲイ向けの出会い系掲示板の経由の出会いだと、そういう訳にはいかなかった。

出会い系の掲示板経由だと有料ハッテン場と違って、相手と約束して一対一で出会っている状況だ。ボクが断ったら相手は途方にくれてしまうだろう。よっぽど相手が嘘をついていたり、人格的に問題がない限りは断ることができなかった。出会った相手が好みのタイプじゃなかったとして、ボクにできるのは相手に対して失礼がないように、できるだけ気持ちよくなって満足してもらうことだけった。そして後腐れなく別れることだけだった。

ベッドサイドに立ったまま、彼の身体を触り続けていると5分も経たないうちに、あっけなくイってしまった。

彼は続けてボクの方もイかせようと身体を触ってきたけど、どんなに頑張ってもボクの方は全く興奮できなかった。

やっぱり大事なのはホテルとか「場所の魅力」じゃなくて「相手の魅力」なんだな。

そんなことを考えながら、ボクは「無理にしなくてもいいですよ」と言って断った。

やんわりと相手の誘いを断ったつもりだったけど、彼が気を悪くするかなと思った。でも、さっきイッたのが、よっぽど気持ちよかったのか彼は満足気な顔をしていた。彼の方は一緒にベッドに横になってボクと会話を楽しみたいという感じではないようで、自分がイッた後は、もうボクに対して興味もなさそうだった。そもそもボクと一緒に会話を楽しむよりも自分のことを一方的に話すのが好きそうな人だった。わざわざラブホテルまで連れてきてもらって、あっという間に終わったんだけど怒っているような感じもなかった。

ボクは先にシャワールームに行って、彼の精液がついてベトベトになった手を洗面所で洗った。洗剤で何度洗っても微かに精液の匂いが残っていた。口の中や身体にタバコの匂いがついていた。

このホテルのシャワーを使わずに家に帰って、ゆっくりシャワーを浴びながら身体の汚れを落とそうと思った。

<つづく>