「ホモにラブレターを渡すとかありえないだろ!」
同級生達は口汚くののしっていた。ボクはその発言に対して怒りよりむしろ共感を抱いていた。そして受けった手紙をまじまじと見ながら嫌な予感がしていた。
もしかしたら不幸の手紙かもしれない。
この手紙を見たら五人に手紙を出せとか書かれているのかもしれない。ボクらの中学や高校ではテレビか何かの影響なのか、一時期だけど不幸の手紙が流行っていた。中身を見ないでラブレターと考えるのは早計ではないだろうか?と思っていた。手紙を受け取った時に感じた嬉しさは次第に薄れていった。同級生達は手紙を開けろと迫ってきたが、手紙をくれた彼女に失礼だと言って開けることを拒んだ。内心ではこの手紙が不幸の手紙だったらボクはただの笑い者になってしまうと焦っていた。同級生達はホモにラブレターをあげた理由について推理を続けていた。メンバーの一人が何かに思い当たったように言った。
「もしかして……神原がホモなの知らないんじゃない?」
「何で?」
「他の科の女子生徒でしょ? 神原がホモって俺らの科の女子では常識だけど、他の科の女子生徒では知らない子もいるんじゃない?」
「なるほど!」
ボクも含めて全員が納得して頷いた。ただ常識という言葉がボクの耳には痛かった。その言葉を聞いたメンバーの一人が言った。
「それじゃ。あの子に神原がホモって説明した方がいいんじゃない?」
「なるほど!」
ボク以外の全員が納得した。
「いや! わざわざそんな説明しなくていいでしょ? 彼女が可哀想でしょ?」
ボクはその言葉を焦って否定した。しかし四対一では圧倒的に部が悪かった。
「なんで? むしろ知らない方が可哀想だろ。早めに神原がホモって知らせた方が傷が浅くて済むよね?」
「そうそう! ホモって教えてあげないと」
「さっきの子ってどの科だろ?」
「●●科の子じゃない? 次に来たらホモって説明しようか?」
「神原からあの子に直接説明すれば?」
「告白した人がホモとか聞いたら泣くんじゃない? これだけ男子がいて、好きになった相手がよりにもよってホモとか可哀想だね。」
これはラブレターじゃなくて不幸の手紙かもしれないのに。それにボクがホモって、他科の知らない女子生徒に、わざわざ言いふらさなくてもいいだろうに。ボクはノリノリで話を進めていく同級生達を暗澹たる気持ちで眺めていた。
<つづく>