深夜のカミングアウト<10>

仕事が終わって、ボクらは職場近くの飲み屋に向かった。

ボクより10センチ近く背の高い彼の顔を見上げる形で、盗みしながら一緒に歩いた。

好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。

脳内を熱い思いがほとばしる。

今から数時間は彼と二人の時間を独占できるかと思うと、嬉しくてたまらなかった。

飲み屋について向き合って座る二人。

好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。

再び、脳内を熱い思いがほとばしる。

つい一ヶ月前までは、ただの彼のことを同期としてしか考えていなかったのに、ある夜を境にボクは本気で彼に恋心を抱くようになっていた。

彼は職場の同期だけでなく、上司からも「危険人物」と認識されている。間違っても馴れ馴れしく接してはいけない。ボクは言葉遣いに細心の注意を払いながら会話をしていた。そんなめんどくさい面も含めて彼のことが好きになっていた。

表面上は普通に会話しながらも、「もしかしたら今日の帰り道に、どこかのホテルに連れ込まれてる展開とかあるのかも?」と、アホ丸出しな妄想をしながら彼と飲んでいた。いやもうそんなことは絶対にありえないんだけどね。

それにしても彼はボクが職場でホモキャラを演じているのをどう思っているのだろうか?

彼の口から感想を聞いたことがなかった。「馬鹿じゃない」「気持ち悪い」とか言葉が帰ってきたら、ショックを受けそうなので怖くて訊くこともできなかった。

ただボクのことを「嫌い」とは思っていないのは確かだった。

彼が二人で誰かと飲むなんて、同じ同期でもいなかった。彼は「嫌い」と思う人には、はっきりと相手に態度で「嫌い」オーラを出していた。

そもそも彼はゲイなんだろうか?

その質問に対する答えは「ノー」だった。彼には付き合っている女性がいると本人の口から聞いたことがあった。

彼はノンケだから告白しても無理。

あくまでボクのことは友達としてしか認識されていないことは分かっていた。

ただ、それでも彼と二人きりで一緒にいる時間は楽しかった。

その後、ボクと彼は急速に接近していく。いや正確に言うと接近したのはボクの方だと思う。ただ彼からもボクに少し接近して来たのは確かだった。

ボクは彼に対して「君のことが好きだ」という態度を全開に出すようになった。ボクから彼に送るメールの件数が増えていた。そして気がつくと彼から送られて来るメールの件数も増えていた。それに合わせて二人で飲む機会も増えていった。

ボクと彼とのメールの続いていた。

そしてボクらの間を行き交うメールの文面は徐々に変化していった。

<つづく>

※長らく止めていたこの章ですが、多分最後まで書きます。