絶対に会えてよかった<59>

あぁ……この袋を開けたら「セーラー服」があって、その服を着て「女装」してくれととか言ってくるんだろうな。

ボクはこの流れの展開からして、以前に出会ったヨウスケさんと同じだと思っていた。

でも、よくよく考えると渡されたビニール袋は、とても小さくて軽かった。どんなに空気を抜いて圧縮しても「セーラー服」が入るような大きさでなかった。

何が入ってるんだろう……

ビニール袋の中を覗き込むとブルーのテカテカした服が入っていた。ところどころホワイトのストライプの模様が入っている。

なんだか見たことがあるような服だな。

その謎の服を手に取ると、とても軽かった。いや。軽いというよりもほとんど重さを感じさせなかった。ボクは袋から恐る恐る服を取り出して、目の前に広げてみた。

あぁ……これユニフォームだ。

えっと。何のユニフォームだっけ……そっかこれって陸上の選手が着てるユニフォームだ!

ブルーでところどころホワイトのストライプの模様のある陸上のユニフォームは、スポーツ商品を販売している有名なメーカーのものだった。

それで……これをどうして欲しいんだろう? もしかしてボクに着て欲しいのかな?

「これって陸上のユニフォームですよね?」
「そうだよ」

彼は嬉しそうに照れながら言った。

そっか彼は「陸上部」だったって言ってたもんな。

そのことを思い出して、なんで今さら陸上のユニフォームが出てきたのか合点がいった。

もう何度も書いてるけど、ボクはコスプレには興味がない。

もちろんセーラー服などを着る「女装」にも興味がないし、彼のようにサッカーや陸上のユニフォームを着るといった「スポユニ」などを着てみたいという願望も全くなかった。よくハッテン場に行くと股間が目立つような丈の短いボクサーパンツを履いている若い子を見かけるけど、そういった商品を何って言うのかすら知らない(普通にボクサーパンツでいいのかな?)。

ボクの中では相手の男性が何を着ていようがプラスにはならない。

どんなコスプレをしても「へぇーそうですか」としか思わない。むしろ私服姿の方が興味がある。その人がどんな趣味をしてるのか、清潔感があるのかが分かるからだ。

「もしかしてヒイてる?」

彼は心配しに尋ねてくる。

「いや……別にそうでもないですよ」

ボクは平然と答えた。

<つづく>