絶対に会えてよかった<72>
名神高速道路なのだろうか? それとも全く別の高速道路なんだろうか?
京都市内の城南あたりで高速に乗ったようだけど、自分がどの高速道路を走っているのか分からない状態だった。ただ時々見える看板を見ると滋賀方面じゃなくて大阪方面に向かっているのだけは理解できた。車内ではラジオのFM放送が微かに流れていた。
えぇーと。今からボクはどこに連れて行かれるんだろう?
一度だけ「どこに行くんですか?」とそれとなく質問したけど「うん。まぁ………」と回答をぼかされてしまった。
ボクは完全にびびってしまって、どこに向かっているのか彼に詳しく質問したかったけど、事実を知るのもなんだか怖くて、それ以上は訊くことができなかった。
彼の容姿を見る限りは、まともそうな感じだったけど、ボクよりも体格はよくて、つかみ合いになっても勝てそうになかった。というか……非力なボクが勝てる大人は少数だと思う。
どこに連れていかれるのか、ずっと心配していて彼との会話の内容はほとんど覚えていない。
ただ漠然と覚えているのは、彼が親と同居していること。大阪に住んでいること。システム会社を起業していること。彼がその会社の社長であること。かなり儲かっていること。それぐらいだった。それとボクの掲示板の書き込みを読んでから「真面目な書き込みだな?」と思って、大阪に住んでるにも関わらず、京都に住んでるボクにメールを送ってみたこと「若い人がの方が好きだけどバカな若い人は嫌い」とはっきり話をしていた。
車はスピードをあげて大阪方面に向かっていた。伏見あたりはとうに過ぎ去っていた。
もし途中で車から放り出されたらどうしようかな?
ボクの頭の中で財布の中の所持金の計算をしていた。
確か少し前に京都銀行のATMで下した1万円札があったはずだよね?
こんなことを気にするのも、まだコンビニにATMがなければスマホもない時代だったからで、もしどこかにの街で深夜に放りだされたとしてもお金を下ろすことはできないし、日中になるのを待ってから、京都銀行の店舗を探し彷徨い歩くしかなかった。頭に中だけで財布の中身の金額を計算すると。なんとか大阪で捨てられても京都までは帰れそうなことは分かった。
そのうち高速から降りてバイパスのような整備された真っ直ぐになっている道路を走り始めた。
どこに連れて行って、何をするつもりなんだろうか?
車はどんどん山の中に入っていった。
これはいよいよヤバいかもしれない。
対向車も少なくなってきて、後ろを走る車も徐々に少なくなってきた。
そんなに悪そうな人には見えないけど、もし山の中で放り出されたとしたら、どうやって人里まで辿り着けばいいんだろう?
ボクは服を脱がされて山の中に放置されるという最悪のケースも想定していた。
<つづく>