映画『彼の見つめる先に』の感想

 

彼の見つめる先に(字幕版)

彼の見つめる先に(字幕版)

  • 発売日: 2018/12/07
  • メディア: Prime Video
 

 

この映画、単純にゲイ同士の恋愛を扱ったものではない。主人公の少年がいて幼馴染の少女がいた。そこに転校生の少年がやってきて、主人公の少年が転校生の少年に恋をすると書いてしまえば単純なのだが、他の映画と一線を画しているのが主人公の少年の「目が見えない」ということだ。

 

目が見えない主人公には、転校生の少年の顔。体が見れない。彼が見ているのは相手が話す言葉だ。もちろん声質だとか匂いだとか他にも要素はあるだろうが、それは映画内でも描かれていないので関係がない。転校生の少年の言葉を通して人間性を知っていく。その過程で惹かれて恋をする。目が見えなくても相手の話す言葉を通して、相手の精神を理解することはできる。

 

相手の話す言葉、その言葉の一つ一つは相手の精神そのものだ。

 

人は目に見える物理的なものに対して気持ちを注ぎがちだ。僕も年齢を重ねて40歳に近くなってきたけど、この年になってわかってきたのが、本当に大事なことは目にえないということだ。むしろ本質的なことは目に見えないということだ。人を愛する際、肉体的な面を好きになることも否定しないけど、精神的な面を好きになることのほうが、より本質的だと思っている。はっきり書いてしまうが、僕はゲイの人がよくネット上で取り上げている「モテる髪型」だの「肉体を鍛える」だの、そういった会話には全く興味がない。読んでいても意味が分からないし、意味を分かりたいとも思わない。

 

ブラジルの映画らしいが、通常の同性愛を扱った映画とは違って、「人を愛するのことの本質とは何か?」を扱ったものだ。たまたま好きにになった相手が同性だっただけで、主人公の少年はゲイというわけでもないはずだ。このサイトのLGBTコンテンツレビューの中で紹介するのもおかしいのかもしれない。

 

これは過去にも書いたのだけれど、僕は女性が書いた文章が好きだ。詩や小説など女性が書いたものの方を多く読んでいる。別に作者の名前を見て性別で選んでいるのではなく、詩などを読んでいて共感できるものが、たまたま女性が書いた作品に多いだけだ。僕は女性の方が芸術に対して真摯だと感じている。一方、全てとは言わないが男性は芸術に対して真摯でないと感じることが多い。好きな芸術家の名をあげれば大半が女性という状態だ。女性の方が精神性が高い人が多いと感じている。そういう面において、僕も精神面で惹かれるのは男性も女性も関係がないのかもしれない。

 

最後に、映画の中でアルヴォ・ペルトの『鏡の中の鏡』という曲が流れている。僕は以前からこの曲がとても好だ。目が見えない主人公の内面を描写するのにとても効果的に流れている。

 

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