ライナーノーツ<9>~インターネットの同性愛世界~

「ハッテン場について、どこまで踏み込んで書こうかな?」

このサイトではハッテン場について赤裸々に書いているけど、文章を書き始めた段階では、どこまで書くべきなのか迷っていた。文章を書いてインターネット上に公開してしまえば誰でも読むことができる。ゲイの人が読むのならともかく、ノンケの人が読む機会だってあるはずだ。ノンケにはハッテン場について全く知らない人だっているだろし、そういった知らなくていい人にまで読ませてもいいのだろうかと迷っていた。

でもインターネットで検索すればハッテン場に関する情報や体験談なんていくらでも見つけることができる。それに他の人が書いたハッテン場に関する文章は肉体関係を中心に赤裸々に書いたものが多くて、ボクが読みたいと思っているような文章ではなかった。

それで、いろいろ迷った結果、やっぱりハッテン場について書くことにした。

そういったゲイの世界の負の側面も含めて、きちんと文章に書くべきだと思った。それにボクにとって欠かせない出来事の多くはハッテン場に関連したものが多かった。

ボクは『京都ハッテン場ガイド』というホームページを見つけてハッテン場の存在を知った。

そしてホームページに書かれた内容を暗記するまで目に焼き付けてから原付に公園に乗って向かった。当時はスマホもない時代だったから、野外でインターネットにアクセスできるような環境ではなかった。

昼間の公園に行ってみて、ホームページに載っていたベンチを見つけて「このベンチに夜になったらボクと同じゲイの人が座っているのか」と期待に胸を弾ませていた。でも夜になって公園に行ってみて残念な結果に終わってしまった。

結局、ボクは野外のハッテン場で誰かと肉体関係を持つことは最後までなかった。

ボクが踏み込むことができたのは話し相手までが精一杯だった。

野外のハッテン場で会う人は、ボクよりも年の離れた年上しかいなかった。ただ一人だけを除いて。

京都の鴨川沿いにデルタ地帯と言われる場所がある。そこでボクは一歳年上の大学生と出会った。その人はデルタ地帯の近くにある大学に通っていた。お互いに野外のハッテン場で同年代の大学生と会ったのは初めてで会話が弾んだ。

そして「この人と付き合ってみたいな」と思った。

「この人ならきっと好きになれそう」と思った。

そして「もしよかったら付き合ってみませんか?」と口から出かかっていた。

なんとなく相手の大学生も似たようなことを考えているように感じた。でも相手の大学生の好みのタイプを聞いているうち「やっぱりボクじゃあ無理かな?」と思って諦めてしまった。

「もしあの時に勇気を出して誘っていたら」と思い出しては今でも後悔する時がある。もし断れていても今もこうやって後悔しているような状況よりはマシだったように思う。

ボクが野外のハッテン場で出会った多くの人の中で「この人と付き合ってみたい」と唯一感じた人だった。 

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