ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

二度と戻りたくない場所<5>

「誰かいますね」


ボクは隣を歩く彼に向かって小さく呟いた。


ボクらはその人の姿が目に入った瞬間、反射的に繋いでいた手を放した。眼の先には40代を少し過ぎたぐらいの男性がいて、まっすぐにこちらに向かって歩いていた。ボクらとその人との距離はどんどん近くなっていって、隣にいる彼も緊張しているのが分かった。


ボクらとその人はお互いに目を合わせないようにしてすれ違った。


この公園に来て初めて外を歩いている人とすれ違った。ボクは「寒いねー」と彼に言って友達同士で何気ない会話をしている風を装った。


すれ違ってから数秒後に振り返ると、その人が公園から出ていって、ボクらが少し前までいた森の方に向かって歩いていく姿が見えた。そして角を曲がって車が停まっていた方向に姿を消したのを確認してから、ボクは「さっきの車の持ち主ですかね?」と言った。彼が向かった森の方には誰もいないことは知っていたので、なんとなく予想がついた。


「あの人もやっぱりゲイですかね?」

「そうでしょうね。きっと誰か相手を探してるんでしょうね」。


ボクらは緊張から解放されてそんなことを話していた。


その人の姿が見えなくなった後、ボクらは、もう一つ別のスポットになっているトイレに立ち寄った。その日は午前中に雨が降っていたので、水たまりやぬかるんだ箇所を避けながら慎重に歩いた。そんな苦労して辿り着いたトイレにも、やっぱり人はいなかった。ボクは「まだ時間が早いから人がいないけど、23時くらいになったらもっと人が多く集まるのかもしれないですね」と言った。現在はどうか知らないけど、大学時代の経験上で23時を跨ぐと、どこからともなく人が集まってくるのを知っていた。


ボクは「闇に隠れて生きる~♪」と懐かしいアニメの歌を口ずさんでいた。そして彼に「なんだかゲイの世界って、妖怪人間の世界に似てますよね」と自嘲気味に話しかけた。


「そろそろ帰りましょうか?」


その公園は、寒い上に頭上を横切る飛行機の音もうるさかったので、ボクらは来た道を戻ることにした、駐車場に戻る途中、遠くに見える福岡空港の明かりがきれいだったので、ポケットからスマホを出して写真を撮った。


駐車場に戻ってから車に乗る前に、最初に立ち寄ったトイレにもう一度寄ってみた。


やっぱりトイレの中には誰もいなかった。トイレの周辺にも誰もいなかった。


ボクはさっきと同じ場所に立って公園全体を眺めて、次に駐車場に止まっている車を眺めていた。


そして、あることに気が付いた。


<つづく>