第42章 二度と戻りたくない場所

二度と戻りたくない場所<9>

なんだか、あの公園に戻ったら15年前の自分が、今もまだベンチに座っているような気がした。大学時代、寒い冬の夜も、暑い夏の夜も、ベンチに座って誰かを待っていた。そんな自分がいなかったとしても15年前の自分に似た誰かがベンチに座っているような気が…

二度と戻りたくない場所<8>

ボクらは車に乗って元来た国道に戻った。 きっと彼は「あの公園に一緒に行ってみたい」と興味本位で言っただけだと思う。特に何か深い考えがあって誘ってくれた訳じゃないと思う。でもボクはあの公園に連れて行ってくれたことに感謝していた。 「もう二度と…

二度と戻りたくない場所<7>

駐車場に停まっている白い車の中では、下を向いてスマホをいじっていた男性が顔を上げて、じっとボクらの方を観察していた。 ボクは車から視線を外しながらも目の端で、じっと車内の男性の姿を捉えていた。きっと「こいつらは何者なんだろう?」と思われてる…

二度と戻りたくない場所<6>

「あれっ? あの白い車って……さっき森の方に停まっていた車じゃないですかね?」 ボクは駐車場に停まっている白い車を見て、どこか見覚えのある車体だと気が付いた。 その白い車は、ボクらが公園に来た最初から停まっていた。車のエンジンはかかったままで最…

二度と戻りたくない場所<5>

「誰かいますね」 ボクは隣を歩く彼に向かって小さく呟いた。 ボクらはその人の姿が目に入った瞬間、反射的に繋いでいた手を放した。眼の先には40代を少し過ぎたぐらいの男性がいて、まっすぐにこちらに向かって歩いていた。ボクらとその人との距離はどんど…

二度と戻りたくない場所<4>

その掲示板サイトを見ながら「乱立」や「混沌」という言葉が頭の中を巡った。 駅のトイレ。デパートのトイレ。公園のトイレ。公園の駐車場。銭湯。サウナ。大学のキャンパス。その他の細かい場所。 さらに、その出会い系の掲示板サイトには、野外のハッテン…

二度と戻りたくない場所<3>

「あそこのフェンス裏の何本か木が生えている辺りはスポットぽいです」 「あそこの木が鬱蒼と生えて薄暗くなってる辺りもスポットぽいです」 「あぁー懐かしい。京都時代に似たような場所を沢山見ました……」 ボクは指差しながら彼に説明をしていた。 懐かし…

二度と戻りたくない場所<2>

ボクらが歩いているのは比較的に新しくできた公園のようだった。 「こういった野外のハッテン場って、どういった経緯でできるんですかね?」 彼は疑問に思っていることを口に出した。ボクも大学時代に似たようなことを疑問に抱いたことがあったのを思い出し…

二度と戻りたくない場所<1>

ボクらは二人して震えながらポケットに手を入れて「寒い!」と叫んでいた。 そんなボクらの頭上を爆音を立てながら飛行機が通り過ぎた。 「ギャー怖い!」 ボクらの頭上のほんの数十メートル上を飛行機が爆音を上げながら通り過ぎていった。飛行中の機体にこ…