二度と戻りたくない場所<9>

なんだか、あの公園に戻ったら15年前の自分が、今もまだベンチに座っているような気がした。大学時代、寒い冬の夜も、暑い夏の夜も、ベンチに座って誰かを待っていた。そんな自分がいなかったとしても15年前の自分に似た誰かがベンチに座っているような気がした。

もし誰かがいたとして、いきなり30代中盤を過ぎた男性が現れても相手も驚くだろうなと思った。でも今のボクなら自分に似た誰かに伝えたいことが沢山あると思った。15年前の自分が欲しかった答えのような物を伝えてあげることができると思った。

さっき「自分から誰かに会いに行けばいい」と書いたけど、自分から誰かを見つけて声をかけていいと思うし、誰かに自分を見つけてもらうのも手だと思う。

とにかく自分から動いて何らの手段で「自分がここにいる」と発信しないと駄目だ、

田舎に住んでいて誰かと会うにも距離が遠かったり、若くて誰かと会うにもお金がなかったりすることもあると思う。もし自分から会いに行くことができない状況であれば、相手を引き寄せてから会いに来させることだってできると思う。

誰かに届くにしても長い時間がかかる。

それに届いたとしての相手から返答が来るまでにさらに時間がかかる。

それは根気よく続けていくしかない。でも一見は孤独で地道で遠回りに見えるかもしれないけど、ボクはそれが一番の近道だと思っている。だからこうやって毎日文章を書き続けてきた。

少なくとも何もしないで、ただ誰かを待っていてもマシだと思う。

それに、もし何かを発信するのであれば、なるべく早くやった方がいいと思う。

数年前から、ニュースなどでAiや副業と言った言葉を耳にするようになったけど、これから暇な時間が増えてくるし、その時間を使って自分で何かを発信する人は増えてくるはずだ。どんどん座席は埋まっていくし、座席の数には限りがあると思っている。もちろん先に座席に座っていても入れ替えはあるとは思うけど、人の波に埋もれる前に、早く動いてしまった方がいいように思う。どこかの自己啓発本に書かれているようなこと書いて不安を煽りたくはないけど、早ければ早い方が有利なように思う。

そんなことを思いながら、電車の窓に映っている年老いた自分の顔を見ていると、今日の出来事について無性に文章に書きたくなった。

もっと若い頃に行動しておけばよかったという後悔が沸き起こってきたけど、もう今更どうしようもない。ただ、ボクが誰かと出会うのに15年かかったという事実があるのなら、他の人がかかる時間を少しでも短くしてあげたいと思った。

きっと家に帰ったら、いつものように彼から電話がかかってくるはずだ。

早く家に帰ったら部屋の片付けをして風呂に入って、彼とゆっくり電話で話したいと思った。今日の朝から夜までの出来事について振り返りたいことは山ほどあった。

そして今日の夜の出来事について、彼から文章に書く許可をもらおうと思った。

<終わり>