第41章 絶対に会えてよかった
彼の手を握って分かったんだけど、緊張のあまり手や足が震えていた。 「自分なんかでいいんですか?」 体育座りして顔を伏せたまま声だけが聞こえた。 「あっ……はい。いいですよ」 ボクは繋いだ手に力を入れて答えた。ただ彼の方は握り返してくれるわけでも…
ボクはフラれた彼に何て声をかけてあげればいいのか迷っていた。ただ隣に立っているってことは、「きっと誰かと話がしたいんだろう」ということだけは分かったので、当たり障りのない言葉をかけた。 「この辺に住んでるんですか?」「いや。たまたま仕事で近…
その時、廊下にはボクと妖怪くんと向井理(似)だけがいた。 向井理(似)は妖怪くんの側に立って、彼の顔を覗き込むように見ていた。 あぁ……向井理( 似)は妖怪君を狙ってたんだ。 あまりの意外な展開に呆然とした。 店内の支配階層は、 向井理(似)>>超えられ…
妖怪くんは何度か顔を上げて、こっちを見たけどボクと目を合わせる前に顔を伏せてしまった。 ここから逃げないってことは、ボクのことが嫌じゃないのかな? その後、どれだけ隣りに座って待っても妖怪くんに動きはなかった。 こういった時。ボクの方から彼の…
「あんなの妖怪じゃん!」 と叫ぶ、ユウちゃん。 彼の声が大きかったので。ボクは慌てて「静かにして!」と指を立てた。部屋の隅に座る「妖怪」呼ばわりされた彼を見ると、自分のことを言われている自覚がないのか、ピクリとも動きがなかった。 ゲイ仲間から…
部屋の隅には、体育座りしてうつむいている小柄な男性がいた。 腕を組んで顔は下を向いていたから彼の表情は分からなかった。ただ背格好からして20代前半くらいと予想された。部屋の隅に座って、他の人たちの乱交を観察しているのかと思いきや、ただ下を向い…
ボクは体を離してから、 「もうあの頭巾はかぶらないんですか?」 と訊いた。 「はい。あなたから言われて止めました」「そうなんだ」 彼は自分の頭巾姿を思い出したのか、少し照れ笑いをしながら話していた。 「みんなが怖がってるって言ったじゃないですか…
「えっ?」 というくぐもった声がマスクの頭巾の下から聞こえた。「なんで?って言われても」と戸惑う仕草と声を聞いて思ったよりも、かなり若い人だと気がついた。 「パペットマペットって芸能人を知ってます?」「はい。知ってますけど……」「そっくりで怖…
ボクは店内を逃げ続けた。彼はしつこく追いかけ続けた。 もし個室に入って寝転がれば、彼が襲って来るのは目に見ていた。 こうなるとチャンスは、誰かが通路を歩いているボクの体を軽くタッチしてくれて、個室に誘ってくれるというパターンくらいしか思いつ…
明るいロッカールームまで来ればパペマペさんは追いかけて来ないだろうと思って、ようやく一息つけた。 「あぁ……君も来てたんだ」 ロッカールームに飛び込んだボクに対して、声と一緒に愛嬌のある笑顔が向けられた。 この男性は「ユウちゃん」と呼ばれている…
お笑い芸人のパペットマペットさんに失礼ですが、以下、彼のことを「パペマペさん」と書くことにする。 このパペマペさんについて、 もしかしたら……この人は覆面フェチなんだろうか? と思った。もし覆面フェチだったら、こんなシュチュエーションに興奮する…
店内に入ると不穏な空気が流れていることに気がついた。 いつもと違って廊下をすれ違う人たちの様子が、なんとなく余所余所しい。 きっと変わった客がいるんだろうな。 すれ違う人たちが、首を傾げながら去っていく。もしくは笑いながら逃げるように去ってい…
これまでいろんなゲイの方と出会ってきた。 振り返ってみると、大学時代にゲイの世界に踏み入れてから、何十人ものゲイの方々と出会ってきた。 今まで書いてきた文章を読んでもらえれば分かると思うけど、ボクは誰かと話をするのが好きだ。 例えば有料ハッテ…