第41章 絶対に会えてよかった

絶対に会えてよかった<43>

どうしよう……セーラー服を買うべきなんだろうか。 ヨウスケさんのメールを読んで迷っていた。今度はコンビニでストッキングを買うのとレベルが違った。「セーラー服を買って彼の前で着れば本気で付き合ってあげる」とメールには書いてあったけど、ボクの好み…

絶対に会えてよかった<42>

京都市内の北部に向かう原付は交差点を右折して、ちょうど一週間前の夜に立ち寄ったファミレスの前を通り過ぎた。ファミレスの店内は、やっぱり近くの大学生達であふれていた。きっと毎晩のように大学生で溢れているんだろうと思った。大学時代、原付に乗っ…

絶対に会えてよかった<41>

彼と出会った夜から数日が経った。ボクはいったって普通の大学生活に戻っていた。 これはゲイの大半がそうだと思うけど、自分がゲイだなんて自覚して生きている時間なんて、一日の中で、そんなに多くはないと思う、 ボクにとって自分がゲイだと自覚する時間…

絶対に会えてよかった<40>

ヨウスケさんのアパートを出て別れた後、待ち合わせの場所のコンビニに戻って原付を回収した。それからボクの住んでいたアパートまでかなり距離があったんだけど、考え事をしながら原付を手で押して歩道をトボトボと歩きながら帰っていた。 途中、お腹が空い…

絶対に会えてよかった<39>

ここまで生々しく書くつもりはなかったんだけど、さっきの質問の回答を書いてから、いっきにアダルトコンテンツに成り下がってしまった。本当は女装の話だけをメインに書いて、さっさと終わらせるつもりだったんだけど、わざわざ後戻って質問に答えて、アダ…

絶対に会えてよかった<38>

「舌で包み込むようにやるんだよー。また歯が当たってるよー。歯が当たらないようにもっと奥の方まで咥えてねー」 アダルト小説のような文章を書いて恥ずかしいけれど、それまで、とにかくフェラは咥えればいいのだと思いこんでいたボクとしては「こんなに奥…

絶対に会えてよかった<37>

ボクとヨウスケさんの関係の続きを書こうと思ったのだけれど、ある読者の方から少し前(9月22日)に書いた、 ボクにしては珍しく嬉しさのあまりノリノリになっていて彼に奉仕していた。 「って、具体的に何をしたんですか?」と、素朴な質問が送られて来た。 …

絶対に会えてよかった<36>

ボクは眼前に突き出されたセーラー服とストッキングを前に戸惑っていた。 「どちらから言うと、ボクよりもヨウスケさんが女装する方が似合うと思いますけど?」 と尋ねた。さっきも書いたけど、女装するには「向いている顔」と「向いていない顔」がある。「…

絶対に会えてよかった<35>

あぁ……この人は本当にボクの好みの外見をしてるな。 ボクにしては珍しく嬉しさのあまりノリノリになっていて彼に奉仕していた。それくらい彼の外見は、ボクの好みのタイプにクリーンヒットしていた。そんなボクのことを「可愛い」なんて言ってくれるから、さ…

絶対に会えてよかった<34>

彼の住処は、一般的な大学生が暮らしている1LDKの賃貸アパートだった。 「そこら辺に適当に座ってゆっくりしてて」と言われたので、ボクはテレビの前に置いているテーブルの近くに座った。 「ごめんね。まだ晩御飯を食べてなくて、何か食べるなら作ってあげ…

絶対に会えてよかった<33>

彼の名前は『ヨウスケさん』という。 出会ってみて瞬間に気が付いたのだけれど、物静かで真面目そうで眼鏡をかけていて、割と見かけはボクの好みのタイプだった。当時は落語会に興味がなかったので知りもしないけど、若い頃の春風亭昇太に似ていた。 「これ…

絶対に会えてよかった<32>

ボクはレジカウンターの上に「水のペットボトル」と「ストッキング」をそっと置いた。 店員の視線がカウンターに置かれた商品に注がれて、ほんの一瞬。0.01秒くらい固まった。 この人はストッキングを買って何をするんだろう? 少し年配の男性店員は、努めて…

絶対に会えてよかった<31>

そしてストッキングを買うべきか迷いながら雑誌コーナーの前に立った。 それから自分の背後に並んでいる「ストッキング」の存在を意識しながら雑誌の表紙を見るともなく眺めていた。隣で立ち読みしている男性の存在が邪魔だと思いながら、その人がいなくなる…

絶対に会えてよかった<30>

そのコンビニで「ストッキング」を買ってもらえないかな? メール相手との待ち合わせ場所は、京都市内の北部にある大きな通りに面したコンビニだった。 ボクは夜の23時過ぎに待ち合わせ場所に到着してから、原付をコンビニの駐車場に停めてから、相手に到着…

絶対に会えてよかった<29>

ボクは自分から口に出しておきながら「冗談だよね?」と笑いながらS君が言うのを待っていた。 ただボクの期待とは別に目の前のS君の表情はこわばっていた。 そして飛び跳ねるようにボクから距離を取って、そのまま走り去っていった。 ボクは一人ぼっち。自転…

絶対に会えてよかった<28>

翌日、教室では「神原は『ジャン』でヌいた」と噂になっているのかと思ったけど、この件に関しては思ったほど冷やかしはなかった。何人かのクラスメイトから冷やかされたくらいで、その後は噂にもならずに消滅した。 恐らくみんな本気でヒイてたんだと思う。…

絶対に会えてよかった<27>

これから書く文章は、子供の頃を思い出しながら書いているボク自身が恥ずかしくてたまらない。それで最初に断っておくけど、どうか読んでドン引きしないで欲しい。 「『碇シンジ』って嫌いじゃないけど、別に好きでもないよ」 と、同級生に答えた後、ボクは…

絶対に会えてよかった<26>

「碇シンジって嫌いじゃないけど、別に好きでもないよ」 と、言葉を選びながら慎重に答えた。 ボクは気になった作品があると同じ作品を消化しつくすまで繰り返して鑑賞する。 そういった意味では、庵野秀明監督の作品では『エヴァンゲリオン』よりも『ふしぎ…

絶対に会えてよかった<25>

好きでもない同性から言い寄られるの取って怖いな。 ボクはそんなことを考えていた。 もともと人によっては恋愛感情を抱いてもいない「異性から」言い寄られるのも怖いのかもしれないけど、さらに「同性から」という要素が加味されると怖さは格段に上がった…

絶対に会えてよかった<24>

とりあえず皆が寝静まるまで時間を潰すことに決めて、下の階の様子を伺いながらボクは眠気と戦っていた。いざとなれば、このまま寝てしまって朝になったら素知らぬ顔をして部屋に戻ればいいと思っていた。 いじめを受けているのだから教師を相談すればいいの…

絶対に会えてよかった<23>

そう言ってきたのは、同じクラスの「Sくん」という生徒だった。 ボクよりも身長が15センチくらい高くて、あまり勉強ができるような印象ではなかった。クラス内で「ヤンキー系」と「真面目系」の中間のポジションを立っていて、クラスの「弄られ役」だった。…

絶対に会えてよかった<22>

「神原くん。一緒の布団で寝ようか?」 ボクは体操服姿の同級生から、いきなり声をかけらて慌てふためいた。そう言って進み出てきた生徒の後ろではクラスメイトたちがニヤニヤと笑っていた。 ◇ さっきまで社会人時代を書いていたのに、いきなりぶっ飛んで高…

絶対に会えてよかった<21>

外に出ると1年前と違って雪は降っていなかった。でもやっぱりその日も寒かった。 横断歩道を渡ってから、いつものように店の方を振り返って店内を想像した。その日は真っ先に廊下にうずくまっている妖怪くんの姿が思い浮かんだ。「ある人」と出会えた喜びは…

絶対に会えてよかった<20>

ボクはある時期。ある人と会うために有料ハッテン場に通っていた。 その人については、この章の最後に書くことにするけど、ボクはその人と話して個室から出て廊下を歩いていると、廊下の隅にしゃがんでいる人を発見した。 どこかで見たような姿だと思った。 …

絶対に会えてよかった<19>

テレビの真正面に二人でしゃがんでいるボクらの姿が異様なのか、最後まで部屋には誰も入ってこなかった。『チューボーですよ!』が終わるとCMが流れ始めた。 「そろそろ寝ます」とCMを眺めながら妖怪くんは言った。 ボクは彼の言葉から想像して「そろそろ寝…

絶対に会えてよかった<18>

彼が年上だと判明したので「妖怪くん」ではなく「妖怪さん」と書くべきなのだけれど、彼からは全く年上の威厳は感じられず、ボクにとっては相変わらず年下のような存在だった。そういう訳で、失礼ながらも「妖怪くん」と書き続けることにする。 1時間位が経…

絶対に会えてよかった<17>

「そんな過去があって、背が高い人を見てもカッコイイとか思わないですよね」 ボクの話を聞くと「大変な目にあってきたんですね」と言って、妖怪くんはボクを抱きしめてくれた。さっきまで彼は震えていたけど、ほんの少しだけ震えは収まっていた。 うーん。…

絶対に会えてよかった<16>

玄関を開けると、すぐに母親が駆け寄ってきて、 「どうしたの? 何かあったの?」 と、心配してきた。居間のキッチンテーブルの上には、サランラップで覆われた状態で昼ご飯が残ったままになっていた。ボクが帰ってくるのをずっと待っていてくれたんだと気が…

絶対に会えてよかった<15>

前日の夜。ボクは教科書が一冊足りないことに気がついた。いつも宿題は忘れないように細心の注意を払っていて、絶対に机の中に忘れていないという確信もあって、本当に教科書を紛失したのかと思った。 このままだと宿題ができない。宿題ができないと殴られる…

絶対に会えてよかった<14>

ボクは一緒に横になってから震えている彼の体をできる限り優しく抱きしめた。 ボクは変わっている人が好きだ。なんとなく世の中の流れに乗り損ねているような人が好きだ。それはきっとボクも似たような存在だからだ。 子供の頃から趣味も変わっていて気が合…