悲しみについて

遠藤周作『影に対して: 母をめぐる物語』という本を読んだ。

 

2020年に見つかった遺稿なのだが、この本を読んでから遠藤周作に対する熱が再燃した。子どもの頃に読んで、ずっと心の中に残っていた遠藤周作の本を買いなおして再読した。中学時代から本格的に小説を読み始めたのだが、古本屋で初めて買った小説が遠藤周作だった。彼の文章を書く際の視点が僕の中でぴったりと合う気がしていた。

 

再読した中に『わたしが・棄てた・女』という本があった。

 

その中で主人公のミツという女性の心中を、突然と横切った言葉がある。

 

この人生で必要なのはお前の悲しみを他人の悲しみに結び合わすことなのだ。

そして私の十字架はそのためにある。

 

以前、日本民藝館で柳宗悦が『悲願』という言葉を書いた掛け軸を見た。それから「悲しみ」という言葉が、ずっと気にかかっている。

 

悲しみこそ、人と人を結びつけることができるのではないか?と。