言葉の力<17>

人間が言葉を使っているのではなく、言葉が人間を使っている。

 

この言葉を読んで「この人は何を言ってるんだろう?」って思う人が多いだろうが、この事実に気がついてから周囲の人たちを見ていると、言葉が人間を動かしている様が手に取るように分かった。言葉が世界を作っているのが分かる。これは頭で分かるのではなく、経験を通して分からないと、本当の意味で分かることはできないのかもしれない。僕自身も手を使って毎日文章を書き続けてみなければ分からなかった。子供の頃から、言葉や意味について考えてきたけど、気がついてみれば当然に思えることだった。本当に大切なことは、あたりまえでありきたりなことなのかもしれない。でも、それに気づいて本当に理解するのは難しい。

 

つくづく言葉というものの存在は不思議だと感じる。ある言葉を人が聞いて、その解釈は人それぞれという多様性を持っている。その一方で、ある言葉の意味はこういう意味という、どの人が聞いても変わらない絶対性も持っている。

 

ただ、この事実に気がついてから一つ問題が起こった。

 

僕は「これから先、僕はどんな言葉を書いていけばいいのだろうか?」という新たな問いが出てきた。同じ事実に気がついている人たちの本も読んでみた。それでもどうにも書く言葉が見つからなかった。そうやって他の人が書いた本を読めば読むほど、そもそも自分が書く必要がないという考えに行き当たってしまった。

 

書く言葉を失ってしまった。

 

<つづく>