土いじり日記(2023/12)

2023/12/31

実家への帰省の新幹線の中で、塩野七生『皇帝フリードリッヒ二世の生涯 上巻』(新潮文庫)を読み終えた。新幹線に乗る前に博多駅の丸善に行って読みたいと感じる本のタイトルを探してまわった。ただ新刊として陳列している棚には興味を惹く本が見つからなかった。気になってメモしていた本は古いせいかそもそも置いていない状態。年越しを迎える前の22時過ぎには、いつもの習慣で就寝。

 

2023/12/30

『学びなおし太平洋戦争4 日本陸海軍「失敗の本質」』が読み終わった。次は塩野七生『皇帝フリードリッヒ二世の生涯 上巻』(新潮文庫)を読み始めた。久しぶりの塩野七生の本。ギリシャの人の物語を書いて以降は、もう書きたいと思えるほどのいい男がいないと言って、これ以上は書かないと宣言している。残りの塩野七生の本もあと少しなので読むのがもったいない気がしている。

 

フリードリッヒ一つ取りあげても、見方とは、

フリードリッヒ自体というよりも、その彼をどう見たか、という、

見た人自身の性格なり考え方によるのだということです。

 この一事は、「歴史は鏡である」と言った先人の言を実証することかもしれません。

 

2023/12/29

朝から夕方まで、ずっと来客の対応。『学びなおし太平洋戦争4 日本陸海軍「失敗の本質」』(文春文庫)を読み始めた。いよいよ最終巻。子供向けに書かれた本なのだが、太平洋戦争の大まかな流れを把握するのに良い本。

 

いったい人間というものはかってで、

自分の失敗や悪事は一日も早くわすれ去ろうとするものだ。

だが、それはまちがっている。  

失敗や悪事こそ、つねに思い出を新たにして、

その過去をふりかえらなくてはいけない。

二度とふたたび、失敗や悪事をくりかえさないためにだ。  

国の場合も、同じことであろう。

 

2023/12/28

夏目漱石『坑夫』(青空文庫)を読んだ。世間は忘年会だけど夜遅くまで仕事で23時に帰宅。深夜遅くに帰宅しても、すぐに寝付けないのでNHKのラジオ深夜便を聴きながら本を読んで過ごした。AM放送が停止する可能性が高いらしい。時代の流れで停止するのは仕方がないのだけれど、綺麗に聞こえるFMではなく、すこし雑音の混じったAMのほうが好きだ。大学受験でホテルに宿泊した時からずっと、仕事の出張先のホテルでもラジオ深夜便を聴きながら寝る習慣が付いている。テレビもつけずに部屋の電気も暗く、ラジオ深夜便を聴きながら窓から風景や道を歩く人を眺める変な趣味がある。明日は朝から来客があるので6時過ぎには起きる予定。

 

2023/12/27

引き続き、夏目漱石『坑夫』(青空文庫)を読書中。中盤まで読んでようやく炭鉱に入ってきた。いつか読みたい本と思ってメモしている本が沢山あるが、来年中に井上洋治『日本とイエスの顔』を読んでみたい。ずっと読みたいと思っていて本棚に置いているのに、なかなか読み始めることができない一冊。僕はカトリック信者ではないのだけれど、カトリック関連の書籍をよく読んでいる。強いものと弱いものがいたら、何故か弱いものと言われている方に見てしまう。よくよく見ていると弱いものを言われているものの方が、本当は強いものなのでは?と思えてしまうから不思議。これは僕の生まれてからずっと持っている性格なのだろう。子供の頃から中島みゆきを聴いていたり、遠藤周作を読んでいたり。星野博美『みんな彗星を見ていた 私的キリシタン探訪記』という本も買ったまま棚に置いたままになっているのだが読んでみたい。

 

2023/12/26

夏目漱石『坑夫』(青空文庫)を読み始めた。彼の大学時代の友人と話していて、自然の流れで久しぶりに、自分がゲイであることを話した。彼と一緒に住んでいる僕との関係は事前に知っている人。このサイトに書かれている自分の中学時代から高校時代。大学時代から現在の話を、かいつまんで話した。子供の頃にカミングアウトしていた話を聞いて、ひどく驚いていた。1990年代でよくもカミングアウトしていたものだと今になって振り返ると自分でも驚いてしまう。

 

2023/12/24

北條民雄『いのちの初夜』(角川文庫)を読んだ。彼と一緒にお出かけして観光地やら行くのだが、どこかの大学の研究員と間違われるケースが多くて面白い。二人で話している会話や質問内容。見た目の雰囲気から、そう間違われるケースが多いらしい。「なにかの研究で来られているのですか?」と、よく言われる。ある場所で知り合ってから僕らの家に出入りすることになった人からも「業者には見えないし、初めてみたときは研究関係で来た人たちかと思った」と言われた。

 

2023/12/25

仕事から帰ってきて、年末年始が近いこともあるが別の事情があって家の大掃除をすることになった。ヘルマン・ヘッセ『シッダールタ』(新潮文庫)を読んだ。

 

知識は伝えることができるが、知恵は伝えることができない。

知恵を見いだすことはできる。知恵を生きることはできる。

知恵に支えられることはできる。知恵で奇跡を行うことはできる。

が、知恵を語り教えることはできない。

 

これこそ私がすでに青年のころほのかに感じたこと、私を師から遠ざけたものだ。私は一つの思想を見いだした。ゴーヴィンダよ、おん身はそれをまたしても冗談あるいはばかげたことと思うだろうが、それこそ私の最上の思想なのだ。それは、あらゆる真理についてその反対も同様に真実だということだ!

 

つまり、一つの真理は常に、一面的である場合にだけ、表現され、ことばに包まれるのだ。思想でもって考えられ、ことばでもって言われうることは、すべて一面的で半分だ。すべては、全体を欠き、まとまりを欠き、統一を欠いている。崇高なゴータマが世界について説教したとき、彼はそれを輪廻と涅槃に、迷いと真、悩みと解脱とに分けなければならなかった。ほかにしようがないのだ。教えようと欲するものにとっては、ほかに道がないのだ。だが、世界そのものは、われわれの周囲と内部に存在するものは、決して一面的ではない。人間あるいは行為が、全面的に輪廻であるか、全面的に涅槃である、ということは決してない。人間は全面的に神聖であるか、全面的に罪にけがれている、ということは決してない。

 

そう見えるのは、時間が実在するものだという迷いにとらわれているからだ。時間は実在しない、ゴーヴィンダよ、私はそのことを実にたびたび経験した。時間が実在でないとすれば、世界と永遠、悩みと幸福、悪と善の間に存するように見えるわずかな隔たりも一つの迷いにすぎないのだ。

 

2023/12/23

遠藤周作『ぐうたら人間学 狐狸庵閑話』 (講談社文庫)を読んだ。過去にも読んだことがあるが、小便を入れる容器に大便を詰め込んでしまった話は笑いながら読んでしまう。

 

自分が別の人間になったような気がする。それは仮面をかむるということだな。

黒眼鏡をかけることによって、別の自分を世間にみせるということだな。

しかし、別に黒眼鏡をかけなくてもワシたちは、

本当の顔を他人にみせておらん。会社では会社むきの顔をつくり、

恋人には恋人むきの顔をつくり、家庭でもやっぱり家庭むきの顔をつくっておるのよ、

ワシたちは。あんたも、そうだろう。

 

~~中略~~

 

しかし、人間が一瞬だけだが、自分の本当の顔をとり戻す時が、

人生にはかならず一度はあるもんだ。それは、ワシラが息を引きとる時。

生命の力が次第に失せ、死の翳が夕靄のように迫ってくるあの瞬間、

はじめてワシらの長い人生の間に他人に見せていた仮面が蒸発して、

自分だけの顔を夕映えのように浮びあがらせる。

だから、デス・マスクといわれるものは「死顔」ではなく

「素顔」と訳すべきかもしれんのだ。

 

2023/12/22

『学びなおし太平洋戦争3運命を変えた「昭和18年」』(文春文庫)を読んだ。打ち合わせが多くて少し残業して帰宅。他部署でしょっちゅう喧嘩して問題を起こしている50代中盤の人がいる。最近、その人と、僕が所属している部署の同僚とで喧嘩が勃発中。その二人の間に入って仲裁をしながら仕事を進めているのだが、その喧嘩ばかりしている人と僕は不思議なことに相性が良い。全方位に喧嘩をしかけている人なのに、僕に対しては何故か喧嘩をしかけてこない。自部署、他部署の同僚の関わったことのある大半から「あの人は嫌い」と言われている人なのだが、僕は何故かその人が嫌いになれない。あまり器用な人ではなくて、同僚たちから誤解をされているだけで、見る角度を少し変えて見れば、そんなに悪い人ではないのではないか?と思いながら職場の同僚たちの悪口を聞いている。

 

2023/12/21

寒波到来。休日。彼は仕事なので頼まれた買い物をして過ごした。晩御飯は中華料理の「西紅柿炒鶏蛋」を食べた。彼と出会ってから知った料理。卵とトマトを炒めて簡単につくれる料理なので、よく食べている。トマトを炒めるという発想がなかった。「老騾子中国鎮江香酢」という黒酢が味の決め手。この黒酢を使って作った酢豚が僕の好物。『学びなおし太平洋戦争3運命を変えた「昭和18年」』(文春文庫)を読み始めた。

 

2023/12/20

佐藤賢一『シャルル・ドゥ・ゴール 自覚ある独裁』 (角川ソフィア文庫)を読書した。ドイツがパリを占領してパリ開放までのフランスの動きについて学生時代の歴史の授業ではあまり触れてくれない。ドキュメンタリー番組では、どうしても主役がアメリカやイギリスやソ連やドイツで、開放戦の中でフランス軍が参加しているくらいの扱い。もう少し詳しく知りたいと思っていたので、シャルル・ドゥ・ゴールにはずっと興味を持っていた。イギリスで活動しているシャルル・ドゥ・ゴールの相手は、単純にドイツとイタリアだけではなく、ドイツ占領後のフランス政府。フランスの植民地統治下の政府。フランスで活動しているレジスタンス。そのレジスタンスに共産主義が介入して来たり、フランス奪還後に利益を得ようと画策するアメリカ、イギリス。ソ連の思惑。もはや魑魅魍魎。

 

2023/12/19

佐藤賢一『シャルル・ドゥ・ゴール 自覚ある独裁』 (角川ソフィア文庫)を読書中。仕事から帰って金曜日に放送されていたドラマ『きのう何食べた?』を視聴。続いて、映像の世紀『塩の行進 ガンジーの志を継ぐ者たち』を視聴した。彼と一緒に見ているのだが、興味を持って見るテレビ番組はほぼ同じ。バラエティ番組を見るのは高校時代には卒業していた。ニュースも朝、晩ごはん食べながら斜め見するくらい。大学時代はテレビを持っていなかったので別に見なくても支障はないのだろう。文化、歴史を扱ったドキュメンタリーが多い。

 

2023/12/18

米原万里『嘘つきアーニャの真っ赤な真実 』(角川文庫)を読んだ。夜は、その本に関係した内容のyoutubeにアップされていた『世界わが心の旅 プラハ 4つの国の同級生』を彼と一緒に視聴した。

 

異国、異文化、異邦人に接したとき、人は自己を自己たらしめ、

他者と隔てるすべてのものを確認しようと躍起になる。

自分に連なる祖先、文化を育んだ自然条件、

その他諸々のものに突然親近感を抱く。

これは、食欲や性欲に並ぶような、一種の自己保全本能、

自己肯定本能のようなものではないだろうか。

 

私たちの会話が成立しているのは、

お互い英語とロシア語を程度の差はあれ、身に付けているからよ。

あなたがルーマニア語でしゃべり、私が日本語でしゃべったら、

意志疎通はできないはず。だいたい抽象的な人類の一員なんて、

この世にひとりも存在しないのよ。

誰もが、地球上の具体的な場所で、具体的な時間に、

何らかの民族に属する親たちから生まれ、

具体的な文化や気候条件のもとで、何らかの言語を母語として育つ。

どの人にも、まるで大海の一滴の水のように、

母なる文化と言語が息づいている。

母国の歴史が背後霊のように絡みついている。

それから完全に自由になることは不可能よ。

そんな人、紙っぺらみたいにペラペラで面白くもない

 

2023/12/17

朝から来客があって彼と接待した。福岡は寒波が来て日中雪がちらついていた。夜はNHKスペシャル『映像記録 関東大震災~帝都壊滅の三日間~』を視聴した。『学びなおし太平洋戦争 2 「ミッドウェー」の真相に迫る 』(文春文庫)を読書した。次に10年以上前から、ずっと読みたいと思っていた米原 万里『嘘つきアーニャの真っ赤な真実 』(角川文庫)を読み始めた。東京にいた頃から、この本のことは知っていて、ずっと存在が気にかかっていたが、ようやく読み始めることにした。

 

2023/12/16

吉村昭『殉国 陸軍二等兵比嘉真一 』(文春文庫)を読んだ。巻末の解説に書かれていた以下の言葉。

 

とくに二人の作家が共感したのは、「戦後へのわだかまり」である。
軍国少年といえば、戦後は「暗黒時代の象徴」であり、
「忠君愛国教育の申し子」のように一言で片付けられる。
そして、一般世論でも戦争の責任は軍人にあり、
「大衆は軍部にひきずられて戦争にかり立てられた」とする風潮が主流だ。
はたして、本当はそうだったのか。

 

あれほど戦争を煽っていた「大衆」は、どこにいったのだろうか?と戦争関連の書籍を読んだり、ドキュメンタリー番組を見ていると思う。

 

2023/12/15

河合隼雄『働きざかりの心理学』(新潮文庫)を読んだ。

 

日本ではすべてのものが場の力の被害者である。

この非個人的な場が加害者であることに気がつかないので、

被害者達はおたがいに加害者を見出そうとして押しつけ合いを

演じることになるのである。 

 

その場の力から抜け出した集団が、また別の場の力を作り出してより悲劇的な場を作りあげてしまう場面を見かけることがある。茨木のり子の『倚りかからず』という詩を思い出した。

 

2023/12/14

若松英輔『14歳の教室 どう読みどう生きるか』(NHK出版)を読んだ。夜に新日本紀行『戦後生まれの城下町 姫路市本町68番地』と、映像の世紀バタフライエフェクト『パリは燃えているか』を視聴した。少し前、彼に「シャルル・ドゴールの人生に興味がある」と話をしていたら、ちょうど映像の世紀に出てきた。近いうちに彼の伝記を読んでみよう。

 

2023/12/13

『学びなおし太平洋戦争1』(文春文庫)を読んだ。1巻目はパールハーバーからジャワ島の占領まで書かれていた。読んでいる本とは無関係だが、A世界とB世界の断絶について、あれこれ考える。A世界に生きている人が、B世界に生きている人に惹かれたときに、はたして関係が築けるのだろうか?その関係は継続できるのだろうか?これは僕の人生の中で、ずっと心の中にある一つの問いかけ。

 

2023/12/12

吉村昭『陸奥爆沈』(新潮文庫)を読んだ。吉村昭の書籍はよく読むが『戦艦武蔵』と同様に、不確かな人の記憶を聞き取りして、書き残した文書を読み解き、少しでも「事実」に近づこうとする姿勢に惹かれる。歴史関連の書籍は、書き手が本の中で描こうとする「事実」と「真実」。読み手が感じる「真実」について考えながら読んでしまう。