言葉の力<9>ー2

誕生日の少し前に、彼から「誕生日プレゼントは何が欲しい?」と質問された。

 

僕は「真理」と答えた。

 

これは冗談ではなく本心で言っている。正確には「欲しい」というよりは「知りたい」と言うべきかもしれないが、僕はこれといって目に見えるもので欲しい物がない。たまに欲しいものがあったとしても、大体は古本で安く買えるものくらいだ。そうやって買っている古本も、さっき言った欲しいと感じているものに関連している。それらの本の中に、僕が知りたいものに通じる「言葉」が書かれていないかと探している。

 

子どもの頃から、時代が変わっても、変わらないもの。本質的なこと。普遍的なこと。に対してしか興味がないかったけれど、そうやってたどり着いた先が「真理」だった。

 

僕の答えを聞いて、彼は戸惑っていたけど困る必要なんて全くない。実は僕に既にプレゼントをもらっているからだ。

 

僕が知りたいもの。探しているものは、自分一人だけでは知ることができない、見つけることができないと感じている。それは必ずしも「人」である必要もなく、「物」でもいいのかもしれないのだが、僕自身と別の「人」の間だったり、僕自身と「物」の間だったり、そういった2つの間に、存在しているように感じている。

 

それは「あわい」と言うべきだろうか。

 

そういった「あわい」の領域に、僕が探しているものがあるように感じている。もっと正確に言えば、それは必ずしも目の前に存在している必要はなかったりする。そして、単に存在すればいいだけではなく、僕とその「人」や「物」との間に行き交う「何か」が必要だと感じている。そう意味で、彼が存在していること自体が、既に僕が探しているものに対しての手がかりとなっている。