言葉の力<14>

僕が付き合っている人は繊細だ。

 

ある日、突然に心が沈むことがある。大体は一日もすれば元に戻ることが多いけど、元に戻った後は、それまで沈んでいた時間を取り戻すかのように動き出す。気分が沈んでいる時は、怒るとか泣くとか感情の起伏が激しい。

 

そういった状況で、彼が言葉を使う時、そこにはもはや「意味」なんて関係ない。意味よりも「感情」の方が優先されてしまっている。意味よりも感情が優先される言葉は、書き言葉より話し言葉の方が多いのかもしれない。

 

僕は真剣な気持ちで言葉をぶつけてくる人が好きだ。

 

そういった人はめんどくさくて嫌われることが多いけど、僕にはそういった人がとても人間らしく思える。僕に対してが傷ついた言葉を浴びせてきたとか、そういったことは脇に置いておいて、それよりも「あなたの感情の発露を分かりたい」という思いの方が強い。

 

意味よりも感情が優先される瞬間、感情が言葉と意味の関係を壊してしまう瞬間。

 

僕はなぜだかとても美しいと感じる。

 

そもそも僕は人の過去にあまり興味がない。一番大事なのは「今」だと思っている。今、話す言葉が真剣に話されているのか、文章を書いた人が真剣に書かれているのか。僕にはその点が大事だと思っている。もし、その人が殺人をした過去があったとしても、僕には興味がない。ただ、その人が真剣に言葉を発しているのであれば、こちらも真剣な態度で耳を傾けるべきだ、目を向けるべきだと感じている。

 

<つづく>